2008-01-01から1年間の記事一覧

堀井憲一郎「落語の国からのぞいてみれば (講談社現代新書)」

落語のことを書いていて、自分でおもしろいなとおもったのは、おれは「上方落語」と「江戸落語」のバイリンガルなんだなってことですね。(p213) たしかに、おもしろい。巻末に落語CDの紹介などがあるが、桂米朝・枝雀と志ん朝・談志がごっちゃに紹介される様…

年末に読んだ雑誌

ひさびさに、雑誌を二冊。Invitation (インビテーション) 2009年 02月号 [雑誌]出版社/メーカー: ぴあ発売日: 2008/12/22メディア: 雑誌購入: 2人 クリック: 3回この商品を含むブログ (20件) を見るまずこちら。ぴあがこのような雑誌を出しているとは知らな…

横山雅彦「大学受験に強くなる教養講座 (ちくまプリマー新書)」

とてもオリジナリティのある主張で、面白かった。 予備校で英語を教えるカリスマ英語講師が、いくつかの角度から、受験で出題されるような評論を読み解くための視座を提示する。 著者自身、受験英語の長文読解において、英語を読むというよりはその文章のバ…

内田亮子「生命(いのち)をつなぐ進化のふしぎ―生物人類学への招待 (ちくま新書)」

著者はチンパンジーなど霊長類の研究を通して、進化的な視点から人間や動物の生き方について考える研究者。「食べる」「みんなと生きる」「連れ合う」「育つ・育てる」といったさまざまな観点において、人間と他の動物の行動の共通点や違う点を明らかにして…

高瀬正仁「岡潔―数学の詩人 (岩波新書)」

数学の情緒に関して語り、独自の思索で数々の数学的な発見をした数学者、岡潔。名高い随筆(読んだことはないが)とともにその名前だけは知っていた。この本は、そんな彼の研究人生を、その思索に寄り添ってたどっていく。科学は、特に数学はそうだが、問題…

伊坂幸太郎「死神の精度 (文春文庫)」

いまさらながら、はじめて伊坂幸太郎に手を伸ばす。 人間の死を決める仕事をしている死神が、さまざまな人間と出会い、その死までを見守っていく。短編を統べるこの大きな筋立てからしてうまいが、音楽が好きで渋滞が嫌いな死神のクールなキャラクター作りと…

町田康「夫婦茶碗 (新潮文庫)」

いや−まいった。饒舌なダメ男の生活というか、人生を描く二編。二編とも、意味の分からないまま、笑いとともにどこかに連れて行かれるような疾走感がたまらない。 どこかで、この人には落語の素養があると耳にしたことがある。確かに、ちょいとあんた、する…

船山信次「毒と薬の世界史―ソクラテス、錬金術、ドーピング (中公新書)」

中公新書の、栽培作物や人間の役に立つものの歴史に関するシリーズは、特に内容を確かめずに安心して買ってしまう。今回もそういう一冊。 「コーヒーが廻り世界史が廻る」や「茶の世界史」、最近読んだ「ジャガイモの世界史」など、トピックとそれぞれの著者…

吉村仁「17年と13年だけ大発生?素数ゼミの秘密に迫る! (サイエンス・アイ新書 72)」

ご存知のとおり、セミは生まれてから幼虫の数年間を地中で過ごし、地上に出てきて短い人生を全うする。普通は毎年同じセミを我々は地上で見ることができる。しかし、アメリカには17年、13年という一見奇妙な周期で、ある年にのみ大発生するセミがいるとのこ…

中谷宇吉郎「科学の方法 (岩波新書 青版 313)」

雪の結晶の研究で有名な寺田寅彦の弟子、中谷先生の科学論。1958年発行であるために確かに例などは古いところもあるが、科学というものの方法や考え方、さらにその限界に関しては、とてもまっとうな、納得のいくところを書いてある本。海外でも日本で他にも…

岩科司「花はふしぎ (ブルーバックス)」

タイトルは「花」と広くつけているが、著者は花の色を分析してきた研究者で、メインは花の色のはなしである。花の色がどのような成分からできているのか、そのような色を出すことにどのような意味があるのか、といったことから、なぜある花が持っている色の…

ピーター・バーンスタイン「リスク〈下〉―神々への反逆 (日経ビジネス人文庫)」

上巻の続き。 未来を予測したいと考える人たちが作り上げてきた確率理論。この理論についての話は上巻から下巻にも続いているが、確率理論の創造に関する話は、『平均への回帰』の法則を用いることの有用性を説いて一段落する。すなわち、株式市場でもなんら…

戸塚洋二「戸塚教授の「科学入門」 E=mc2 は美しい!」

ノーベル賞を受賞した小柴先生の弟子として、ニュートリノに質量があることを発見し、ノーベル賞はほぼ間違いないと思われていながら惜しくも急逝した著者が、病床で書いていたブログの文章などをまとめた一冊。読んでみねばなるまい、という気持ちで購入し…

水木しげる「猫楠 南方熊楠の生涯 (角川文庫ソフィア)」

だから私が、熊楠の妖力の凄さを、今、漫画で甦らせようとしているんです。(p419、水木しげると中沢新一の対談より) 水木しげるが、世紀の大奇人、大生物学者の南方熊楠を描く。妖怪が現れ、怪しい森に魅入られ、猫が人間とぺらぺらしゃべる。これまで水木…

ピーター・バーンスタイン「リスク〈上〉―神々への反逆 (日経ビジネス人文庫)」

こちらの本で紹介されていた本。紹介されていた金融・投資系の本の中でも興味を引いたので、読んでみた。帯に「勝間和代推薦!」などと書いてあると、資産形成に役立てるような有益さを求めてしまわねばならないように思えてしまうが、それはこの本の一面に…

川喜田愛郎「生物と無生物の間 ウイルスの話 (岩波新書 青版 245)」

2008-01-22 だいぶ前になるが、この記事を読んで、ほほう、50年前とはいえ(だから?)今読んでも面白そうだと思っていたところ、しっかりと復刊されておりました。 元の記事で、『50年前の』とわざわざ書いてあるのは、昨年話題になったこの本とほぼ同…

澤上篤人「10年先を読む長期投資 暴落時こそ株を買え (朝日新書)」

お金関係の本を一冊。正直なところ、こういう本を読んでいますよ、というのは、お金に無知ですよ、と告白しているようで少し恥ずかしい気もしてしまう。しかしこれはちょっと面白いところのある本だった。 『さわかみファンド』の社長が自ら語る長期投資論。…

池谷裕二・木村俊介「ゆらぐ脳」

若くて将来を嘱望されている脳科学者である池谷裕二先生の話を、「東京大学立花ゼミ」「ほぼ日刊イトイ新聞」で活躍してきた木村俊介さんが聞く。これまでの二人の著作からしても面白くならないはずがないのだが、確かにそのとおりの一冊だった。 ただし、これ…

小平邦彦「怠け数学者の記 (岩波現代文庫)」

戦後早い時期にアメリカに留学し、そのご現地で数学者として世界的に活躍した著者のエッセイ集。これを読むと、学者として世界的に成功するにはどういう心持ちであればいいのか、などということを考えてしまう。 あくまでイメージでしかないが、数学者は、頭…

晴山陽一「英語ベストセラー本の研究 (幻冬舎新書)」

これまで自身で英語関連本をさまざまに生み出してきた著者が、戦後から現在にかけて出版された英語学習に関してのベストセラー本を読み直して比較し、英語教育はどのようにするのがよいのか、について提言する。全てがすぐに身になるわけでもないのに英語本…

永田俊也「落語娘 (講談社文庫)」

ひさびさに、落語を題材にした面白い小説に出会った。 おじさんに連れて行ってもらったのをきっかけに落語に深くのめり込んでいき、落語家見習いとして修行を始める女主人公。彼女が入門することになったのは、家族を亡くし、男一人で組織からも干された中堅…

絲山秋子「ニート (角川文庫)」

この人はダメな男を書くのがほんとうにうまい。ただダメな様子を書くのではなく、そこに至ってしまうような人生も十分にありうるのだ、という人生の大変さや不条理さみたいなものを登場人物の様子が語っているのである。 男だけではなく、登場人物どうしで交…

本川達雄「サンゴとサンゴ礁のはなし―南の海のふしぎな生態系 (中公新書)」

一度だけ、沖縄に行ったことがある。一面に広がるサンゴ礁には、南国に来ているというウキウキ感と相まって、心躍らされずにはいられない。このサンゴについて、一般向け科学書の名著「ゾウの時間ネズミの時間」と、自作の不思議なお歌で有名な生物学者、本…

塩野七海「コンスタンティノープルの陥落 (新潮文庫)」

イスタンブールへの出張を期に、この有名な作品を読んでみることにした。 イスラム教のモスクが建ち並ぶイスタンブールも、かつてはキリスト教を奉じる東ローマ帝国の首都であり、ギリシア色の濃い街だった。当時鉄壁を誇ったその都がいかにして孤立していき…

浅野和生「イスタンブールの大聖堂―モザイク画が語るビザンティン帝国 (中公新書)」

東ローマ帝国の首都としてコンスタンティノープルと呼ばれ、オスマントルコによって陥落したのちにイスラムの都市となったイスタンブール。その都市の変遷を1500年近くにわたって見守り続けているのが、聖ソフィア大聖堂だそうだ。 だいたい、もともとキ…

渡辺将人「見えないアメリカ (講談社現代新書)」

真新しい視点のアメリカ政治論。おもしろかった。 アメリカは知られているようにその構成員が極めて多様な国である。エスニック(民族)や宗派、性別、地域性など、それぞれの人が基盤とするアイデンティティは違う。しかし、この本の前書きでも触れられてい…

半藤一利「それからの海舟 (ちくま文庫)」

東京で生まれ、佐幕藩として有名な長岡に暮らしたこともある著者。徹底的な「薩長嫌い、幕府びいき」の立場から、勝海舟について講談風に語る。 すがすがしいほどの肩入れようは、半端に客観的、中立であろうとする書き方よりもずっと好ましく読める。 西郷…

「ちりとてちん 完全版 DVD-BOX II 割れ鍋にドジ蓋」

TV

一枚目→「ちりとてちん 完全版 DVD-BOX I 苦あれば落語あり(4枚組)」 - 千早振る日々に引き続き。それにしても、これほど見るものを引きつける力があるドラマはそうない。 主人公が落語家として修行をはじめ、結婚を経て成長していく第二巻。 その前半の中心…

永田和宏「タンパク質の一生―生命活動の舞台裏 (岩波新書)」

久しぶりに生命科学系の一般向け本を。まず、タンパク質と言われてもなんだかよく分からない人のために、この本の「はじめに」から引用を。 タンパク質と言えば、すぐに牛や豚などの肉、あるいは大豆などの植物性タンパク質など、食べ物を一般には連想する。…

志ん朝一門「よってたかって古今亭志ん朝 (文春文庫)」

2001年に惜しくも亡くなられた名人、古今亭志ん朝の弟子たちが師匠との思い出を語る一冊。 さすがに噺家さんたち、しかも同門の勝手知ったるメンバーが集まって話しているだけあって、話が面白い!志ん朝さんについては、どちらかというと彼の芸の良さだとか…