2011-01-01から1年間の記事一覧

佐藤博樹・武石恵美子「男性の育児休業―社員のニーズ、会社のメリット (中公新書)」

2004年刊。男性の育児休業について、なぜそれが必要か、どうすれば取得する人が増えるか、について、アンケートのデータなどから概観し、今後への展望を述べる。少し古い本だが、全体として問題となっているところ、今後の課題などについては変わっていない…

中間真一・鷲尾梓「仕事と子育て 男たちのワークライフバランス (幻冬舎ルネッサンス新書)」

仕事と子育て、家庭とのバランスはいつまでも難しい課題だ。父親になった男たちが、どのようにその両立という難しいテーマと向き合っていくかに焦点をあててその実情と実際の声を拾い上げた一冊。 職場にも、身近にそういうことに苦労している人はいるだろう…

序 池澤夏樹「福永武彦戦後日記」

ジュンク堂で、滅多に買わない単行本を衝動買い。ずっと近くにおいて、旅先で、家で、ふと心を休めて、ゆっくり読んだ。今年のことを思い出す時、この本のこととリンクして思い出されるだろうと思う。文学を志す一人の青年。戦争末期、妻と疎開し子どもが生…

水島昇「細胞が自分を食べる オートファジーの謎 (PHPサイエンス・ワールド新書)」

その道の第一人者である大隅先生の門下生が『オートファジーをテーマとした初めての一般書(p213)』を書いた一冊。バイオサイエンスにおける話題の概念であり、ある程度フォローしてはいたものの、せっかくだからちゃんと勉強してみようかと購入。 とはいっ…

大澤武男「ヒトラーの側近たち (ちくま新書)」

この本を面白いと書くのは不謹慎かもしれないが。 それでもやはり、どういうメンバーが集まって、どのような力学が働いてあそこまで突っ走ってしまったのか、というところは興味があるところだ。 ゴタゴタと勝ち負けを繰り返し、違法な方法にまで手を染めた…

山本大輔「心と遺伝子 (中公新書ラクレ)」

行動遺伝学という分野がある。さまざまな動物の行動がどのように遺伝的に決定されているかを探っていく、といったところだろうか。この本は、その行動遺伝学の最新(といっても5年前の本なので「やや」がつくかもしれない)の知見を、バリバリの現役研究者…

ロバート・シアーズ、ジェームズ・シアーズ「パパになったあなたへの25章―シアーズ博士夫妻ジュニアから新米パパへの子育てエール」

大事な友だちからのプレゼント。相変わらず、ツボをおさえてくれていて、ありがたい。子どもを持って、父親ができること。心構えができないうちに、自然と母親に任せっきりにならないために心がけること。 そういう視点に絞られて書かれた、新しく父になる人…

関一夫「赤ちゃんの不思議 (岩波新書)」

「赤ちゃん学」の方法、最新の知見までを紹介する一冊。おもしろい。赤ちゃんは、生まれたてのときから、我々が直感として感じているよりもずっと、高度な認知能力を持っている。このことが次々と実験的に示されつつある。赤ちゃんは、(大人的に)魅力的な…

落合博満「采配」

タイトルかっこいい。のみならず、内容も濃い。前著「コーチング―言葉と信念の魔術」は、身近な後輩・部下に対してどのように接し、成長を促していけばいいかという視点で書かれていた。この「采配」は、まさに著者の立場が先輩から監督に変わるがごとく、次…

野口雅弘「官僚制批判の論理と心理 - デモクラシーの友と敵 (2011-09-25T00:00:00.000)」

おもしろかった。通りいっぺんの官僚批判で終わる本でも、逆にただの擁護でも終わる本ではない。マックス・ウェーバーら過去の人々の英知をひもときつつ、官僚制の両面を見つめながら、官僚制というものの価値と、民主主義社会を維持していくことの難しさを…

中谷彰宏「「出る杭」な君の活かしかた (アスカビジネス)」

簡単に読める自己啓発本、というイメージのある著者だが、久しぶりに読んでみると、この本がまたすごかった。 著者の強みは、広告業界で働いていたときに、これ以上出来ないくらい突き詰めて働いた経験のようだ。そこまでしないと見えない仕事の本質というか…

城山三郎「粗にして野だが卑ではない―石田礼助の生涯 (文春文庫)」

自分の中に変わらぬ尺度をもち、筋を通すことを何より重んじる戦前の商社マン、後の国鉄総裁の主人公。その仕事に生きた男のかっこよさが、城山三郎らしいビジネスの現場の空気感とともに描かれる。 戦前に特に留学もせず、伊豆の自然いっぱいの過程に生まれ…

西川伸一・倉谷滋・上田泰己「生物のなかの時間 (PHPサイエンス・ワールド新書)」

理化学研究所のバイオサイエンスを担う3人の研究者が、生物の時間について語る。 それにしても難しい本である。一般向けの新書であるし、決して難しい言葉を使っているわけではない。しかし、現状の解説もあるとはいえ、話していることは「何がわからないか…

久保田崇「官僚に学ぶ仕事術 最小のインプットで最良のアウトプットを実現する霞が関流テクニック (マイコミ新書)」

キャリア官僚がその仕事術を公開、という実にスタンダードなコンセプトのビジネス書。仕事上のアウトプットをするために効率よくインプットする、といった内容は、こういう本を読み慣れた人には特に真新しさはないかもしれない。しかしこの本は、そういう部…

狩野博幸「若冲 ――広がり続ける宇宙 Kadokawa Art Selection (角川文庫)」

初めて見た人なら、誰でもその眼を引きつけられるであろう江戸中期の画家、若冲。裕福な青物問屋の長男として生まれ、十八世紀なかばの京都における文化人のサロンからその実力を見せていった稀代の画家の姿が、新発見の絵、新しい知見などが織り交ぜられつ…

内田和俊「ちょっとした言葉グセを直すだけで、あなたの人生は変えられる!」

内田和俊さま、この場を借りて献本御礼申し上げます。このような、匿名・無名の1ブロガーにまで、嬉しいことです。言葉をポジティブなものに変えれば、気持ちにもポジティブな影響が及ぶ。自分の言葉グセに注意しネガティブな言葉をやめていくことで、ネガ…

ロンブ・カトー「わたしの外国語学習法 (ちくま学芸文庫)」

『5カ国語の同時通訳者、10カ国語の通訳者、16カ国語の翻訳者』であるという著者による、全ての言語に通用する独自の外国語学習法がここに明かされる。訳は、ロシア語の達人、米原万里である。これまで英語学習法というものをいくつか見てきたが、この…

中尾佐助「花と木の文化史 (岩波新書)」

この著者と言えば「栽培植物と農耕の起源」という本が有名だが、この本ももっと注目されても良い。そのくらい、実に面白い。 穀物をはじめとする有用栽培植物について語った「栽培植物と農耕の起源」から水平展開するかたちで、この本では花卉園芸植物につい…

長沼毅「形態の生命誌―なぜ生物にカタチがあるのか (新潮選書)」

『辺境生物探訪記』がとても面白かった著者が、動物の骨格、口、植物の葉のでかた…さまざまな「カタチ」について、妄想しつつ、調べつつ、思考を広げていく刺激的な一冊。 仮面ライダーとエイリアンの顔から、節足動物の口の話へ。天使の翼から、昆虫の翅の…

モース研究会「マルセル・モースの世界 (平凡社新書)」

あとがきにも書いてあるように、モースと言えば、大森貝塚の人かと思っていたが、違うようだ。あちらは、エドワード・モースという生物学・博物学者。この本のモースは、社会学者・人類学者のマルセル・モースである。「贈与論」という主著のタイトルくらい…

櫻井武「睡眠の科学―なぜ眠るのかなぜ目覚めるのか (ブルーバックス)」

タイトルから、レム睡眠とノンレム睡眠の話でしょ、睡眠には約1時間半のサイクルがあるから、睡眠時間がその倍数の時間だと起きやすいのだよね、などという知ったかぶりな先入観があったが、少し読むだけで、それが言いようがないほど浅はかさであることを…

塚谷裕一「植物の「見かけ」はどう決まる―遺伝子解析の最前線 (中公新書)」

実家の本棚にしまってあるのを発見して再読。なぜまた、こういういい本を実家に押しやってしまったものか。本の価値の判断は、意外とそのときの気分だったり、短絡的である。 著者、弱冠31歳の新書である。これだけでも驚きだが、実験植物アラビドプシスと…

米原万里「心臓に毛が生えている理由 (角川文庫)」

通訳・翻訳という言語を相手にする仕事ほど、文化の違いに敏感にならざるを得ないものはないだろう。 ロシア語の通訳者として世に出て、「嘘つきアーニャの真っ赤な真実」というぶったまげるほどの(ほんとうに、ほんとうに面白い)一冊を世に出した著者の、…

吉本隆明「真贋 (講談社文庫)」

吉本隆明が、「精一杯の率直な思いを披瀝」したインタビューがまとめられた本書。 赤ん坊時代の親の影響は一生ついてまわるものだからうんぬん…という話など、わからなくはないが少々くどいお話もあるものの、さすがにハッとさせられる一言が多く、考えさせ…

仲正昌樹「今こそアーレントを読み直す (講談社現代新書)」

サンデル教授のことなら誰でも知るようになった今、「政治哲学」という分野もまた興味を持たれるようになってきていると想像する。しかし、同じ「政治哲学」とはいっても、この本で紹介されているアーレントは、かなり雰囲気が変わってくる。著者いわく、「…

山本真司「35歳からの「脱・頑張(がんば)り」仕事術 (PHPビジネス新書)」

さて、そろそろこの本で書いてあるような年齢に近づいてきた。どころか、実際はもはやこの本で書かれているような仕事の仕方をしなければどうしようもない状況になりつつある。中間管理職、と言えば言える。ある人にそう言われて図星であるとともに少しショ…

岩田健太郎「1秒もムダに生きない 時間の上手な使い方 (光文社新書 525)」

前著「予防接種は「効く」のか?」が非常に面白かった著者の時間管理術、と書くと著者は意図が伝わっていないとお怒りになるかもしれない。そういう本であるような体裁をしていながら、まったく違った側面から時間の使いかたについて考える一冊。本は著者で…

「マイ・バック・ページ」

「ブラック・スワン」も見たし、とても面白かったのだけど、なぜか書いて残しておきたいのは、今日見た「マイ・バック・ページ」。妻夫木聡と松山ケンイチがその役者としての真価をこれ以上なく発揮していて引き込まれた。2時間超があっという間だった。 「…

楊逸「時が滲む朝 (文春文庫)」

特に中国に思い入れがあるわけでも、日本の現状に不満があるわけでもない。ただ、この本を読むと、わけもわからず、親のことなどを思い出して、胸がつまった。ふるさとに、いつでも帰れること。つながっていられること。子どもがいたら、ふるさとの言葉を話…

菅裕明「切磋琢磨するアメリカの科学者たち―米国アカデミアと競争的資金の申請・審査の全貌」

アメリカの科学研究費はどのように申請し、どのように審査されているのか。研究者としてアメリカでテニュアを取得し、科学研究費に応募するとともに、その審査にも関わってきた著者。審査される側、する側の両方からアメリカの科学研究費のあり方について詳…