2010-05-01から1ヶ月間の記事一覧

エッカーマン「ゲーテとの対話 上 (岩波文庫 赤 409-1)」

ドイツの偉大な文豪ゲーテの晩年に、彼と親しく交わった若き文学者が、その楽しくも意義深い対話を思い起こす。ゲーテは、自分の作品の創作の過程や、他人の誌や絵、音楽の批評、仲間との会話を通して、著者に詩作のなんたるかについて語る。どういう対象を…

鶴見俊輔「思い出袋 (岩波新書)」

八十を越えた評論家が、昔の思い出す風景、覚えている言葉、ずっと変わらない信条、老いた自らを見つめて思うこと…などについて語っていくエッセイ。 私は八十一歳を迎えて、視界がはっきりしているとは言えない。しかし、ぼんやりしていることと、それがし…

湊かなえ「告白 (双葉文庫) (双葉文庫 み 21-1)」

本屋大賞も受賞したミステリーを、「最後がすごいから読んでみて」と渡された。普段積極的に小説やミステリーを自分から読もうとしないが、そう言われると、ちょっと興味がわく。しかも、衝撃!と言われたり書いてあると、どれどれどんな展開になっているの…

海老沢泰久「美味礼讃 (文春文庫)」

これはおもしろかった。日本一の調理師専門学校の経営者であり、料理研究家である辻静雄をモデルとした評伝。500ページ、一気に読み切った。 未だフランス料理のなんたるかも全く知られていなかった時代、料理学校を経営していた養父から渡された本を頼り…

ミュージシャンという生き方

職場の後輩を連れて、同級生がボーカルをやっているバンドのライブを見に行った。 新しいアルバム発売後の、全国ツアーのファイナル。 久々に買って聴いた新しいアルバムが、良い意味で遊べていて、勢いがあり、いろいろと試みていて、とてもいいと思ったの…

竹内敬人「人物で語る化学入門 (岩波新書)」

念のため書いておくと、「科学」ではなく「化学(ばけがく)」である。物質の成り立ちや性質について考える「科学」の一分野であり、この分野の大きさは、物理とならんで、ノーベル賞の一部門を占めていることからもわかる。ぼくが専門としている生物も、結…

吉越浩一郎「問題は、ビジネスセンスを磨くことだ! (WAC BUNKO 121)」

以前に読んだ「デッドライン仕事術」では、デッドラインをもうけて残業をなくし効率を高める仕事術を、経営者として会社を率いた経験から実践的に紹介してくれていた著者。 この本では、もう少しやさしく、若い人間が会社で実力を発揮するために何が必要かを…

菊池新「そのアトピー、専門医が治してみせましょう (文春文庫)」

皮膚科専門医、菊池先生の著書。文庫で手に入りやすくなったので、読んでみた。 ぼくのかかりつけの先生である菊池先生が、アトピーという皮膚病の理屈と対処法、自身が日ごろ行っている治療の考え方と問題意識、さらにはどういう医者にかかればいいか、とい…

河合隼雄・鷲田清一「臨床とことば (朝日文庫)」

日常のことばで、生活の中で哲学しようとする鷲田先生。患者と向かい合い、その世界に入り気持ちを通じ合わせようとする河合先生。「臨床哲学」と「臨床心理学」の第一人者がことばをかわし合う対談は、とても自由で刺激的だった。「臨床」というキーワード…

辻原登「円朝芝居噺 夫婦幽霊 (講談社文庫)」

三遊亭円朝という落語家がいた。江戸から明治にかけて、多くの新作落語を世に問い、一つの芸能としての落語を確立した。現代落語の祖、といってもいいだろう。 こちらでも紹介している雑誌「東京人」の特集では、円朝を「落語界のシェイクスピア」と評してい…