吉越浩一郎「問題は、ビジネスセンスを磨くことだ! (WAC BUNKO 121)」

以前に読んだ「デッドライン仕事術」では、デッドラインをもうけて残業をなくし効率を高める仕事術を、経営者として会社を率いた経験から実践的に紹介してくれていた著者。
この本では、もう少しやさしく、若い人間が会社で実力を発揮するために何が必要かを説く。

前提として、ビジネスは実力を磨けばそのとおりに答えが返ってくるものではなく、「コンクール」である、と著者は述べる。だからこそ、単に実力を努力して磨いていくのではなく、勝たないと意味がない。もっともだが、努力の過程を認めてもらえる、絶対評価である学校教育から、他社に勝たないと意味がないビジネスの世界へ入る時の人の戸惑いの多くはここにあると思うと、まことに重要なことをまず述べてくれていると思われる。

では、どのように実力をつけ、成果を出していくか。
いくつか挙げていてくれているが、例えば、言われたことをただやるのではなく、自分ならどうするか、ということを考え『独立するつもりで仕事をする(p57)』こと。
また、計画を綿密に立てることに時間をかけるのではなく、『計画はアバウトでいいですから、ともかく「実行」し、そこにこそ時間とコストと努力をかけていく(p114)』こと。
さらに、プロセスの仕組み化を考え、改善することでより成果を出せる体質にする、というあたりは、ライターの日垣さんが「知的ストレッチ入門」でも繰り返し述べてくれていたことだ。特に緊急性は高くないが、仕事全体に余裕をもたらすような課題の解決を優先する、というあたりなども同じ考えに基づいている。複数の人が同じようなことに注意しているのを目の当たりにすると、仕事のできる人が、どういうところに力を使って成果をあげてきているか、力の使いどころがわかっておもしろい。

最後に、こうしたやりかたをいかに職場に浸透させ、実行していくか、という意味でのリーダーの役割についても述べている。判断し、優先順位をつけていく。自分の責任のある範囲を少しずつ改善していく。仕事に近道はなく、地道な日々の実行からしか成果は生まれないことが身にしみる。

働き始めて10年近く経つ社会人には少し内容が薄いかもしれないが、基本をもう一度確認して、日々の仕事に生かせるという意味では役に立つだろう。