2013-01-01から1年間の記事一覧

浦久俊彦「フランツ・リストはなぜ女たちを失神させたのか (新潮新書)」

タイトルがもっと直球だったら目に留まる人も多いのでは、少しタイトルで損をしているな、というなかなか面白い一冊。 何年か前にブタペストを訪れたことがある。そこにフランツ・リストが弟子をたくさん育てた「リスト音楽院」があり、非常にその展示と、リ…

「植物の軸と情報」特定領域研究班「植物の生存戦略―「じっとしているという知恵」に学ぶ (朝日選書 821)」

「動かない」植物が、どのように環境に合わせて生きているのか、その生存戦略がさまざまな研究により明らかになってきている。本書は、そうした研究に関わる植物科学系の研究者が、その知見を広く一般に向けてまとめたものである。 と書くと普通だが、この本…

手塚眞「父・手塚治虫の素顔 (新潮文庫)」

実際に読んだのは2年以上前。子どもができて今、あらためてぱらぱらとめくると、仕事が大好きな人間が、どうやって自分の子どもと向き合うか、ということについて考えさせられる。 本当に忙しい時、父は家族の前に滅多に姿を現しません。まるで天然記念物の…

木村俊介「「調べる」論 しつこさで壁を破った20人 (NHK出版新書)」

インタビュアーの達した一つの結論として、これほど「話を聞くこと」「話をすること」の面白さに迫ったものはないかもしれないと思った著者の言葉から。 「相当な大物であっても、話が目の前の人にも興味深いものかどうかと不安を感じがちである」(p268) …

遠山顕「脱・「英語人間」 (生活人新書)」

いいかげん、海外の研究者と国際学会などで積極的にコミュニケーションを取る必要に迫られている。立ちはだかるのは、英語という壁。単に、不安なだけなのかもしれないと思いながら、足を踏み出せずにいるのだ。 この本をたまたま再読したのは実にぴったりな…

羽生善治・白石康次郎「勝負師と冒険家―常識にとらわれない「問題解決」のヒント」

「勝負師」こと、トップ棋士の羽生さんと、「冒険家」こと、海洋冒険家・ヨット乗りの白石さんの対談。とある講演会で出会った全く違うバックグラウンドを持つふたりの、意気投合して語り合う姿が目に浮かぶ。 常に何かにこだわらず、偏らず、正直に、自分が…

「桐島、部活やめるってよ(DVD2枚組)」

面白いという話を目にしながら、日々の忙しさに追われ見ないでいる…そんな映画はいくらでもある。今回は、日ごろからそのセンスと考え方を尊敬している後輩に勧められ、「よしっ」と思い見てみた。ある高校の、たった何日かの出来事と人間関係を描いただけの…

竹内薫「科学嫌いが日本を滅ぼす」[rakuten:hmvjapan:11741057:image]

「サイエンス」「ネイチャー」と言えば科学者でなくても知っている二大科学誌である。本書は、多方面で活躍中のサイエンスライターが、この二大科学誌の創刊の歴史、少しずつ違うコンセプト、それらに載せてきた科学者たちのスキャンダルなどを語りつつ、日…

藤堂具紀「最新型ウイルスでがんを滅ぼす (文春新書)」

著者は東大医科学研究所の研究者。この本で焦点を当てられているのは「難治がん」と呼ばれる悪性脳腫瘍などのがんである。なかでもグリオーマと呼ばれる脳腫瘍の四分の一を占めるタイプの腫瘍は、『周囲の脳に浸み込むように広がっていき、正常な脳との境界…

羽生善治「直感力 (PHP新書)」

何やらアマゾンのレビューにそんなことが書いてあった気がするが、これは、研究者にとっては、かなりすごい本である。いろいろな言い方があると思うが、この本に結びつく形で書けば、自然科学の研究とは、自然界の法則を探る営みである。こういう結果が出た…

羽生善治「決断力 (角川oneテーマ21)」

最近、ふたたび将棋に熱中しだした。しばらくの間離れていたのだが、久しぶりに触れてみると、いろいろと得るもの、考えるところがあっておもしろい。棋界の第一人者、羽生さんのこの本は、2005年のもの。もちろん出ていることは知っていたが、当時は、…

島朗「島研ノート 心の鍛え方」

将棋の本であるが、一切棋譜はない。タイトルどおり、何かを極めるためにどういった心の持ちようが必要なのかを一般の人々に語る、エッセイである。著者は、将棋棋士である。一般的な認知度は高くないかもしれないが、ぼくが将棋にはまっていた小学生のころ…