遠山顕「脱・「英語人間」 (生活人新書)」

いいかげん、海外の研究者と国際学会などで積極的にコミュニケーションを取る必要に迫られている。立ちはだかるのは、英語という壁。単に、不安なだけなのかもしれないと思いながら、足を踏み出せずにいるのだ。
この本をたまたま再読したのは実にぴったりなタイミングだった。『「英語人間」とは、英語をかじったために、いろいろな疑問や不安の縛りにあって悩む日本人のことです。(p4)』…まさにぼくのことじゃないか。
NHKラジオの英語番組でフレンドリーな英語をぼくらに教えてくれた(なんと、今も教えてくれている)著者は説く。英語は『水平感にあふれた人間関係の世界(p6)』の言語であると。ぼくには、その水平感あふれる文化のようなものを受け入れられるかどうかで、英語への苦手意識がかなり減るのではないかと読者に語ってくれているように読めた。そういう水平関係の表れとして、ファーストネームでの呼び合いや、「Hi.」という呼びかけ合いがある。買い物やホテルくらいなら、短い言葉でも、交わせばそれで充分。そんなもんだと思えば何も怖くない。ちょっと演技がかるのは、英語の特性だと思えばいい。

実際に内容のある会話をする場合はどうか。頭でっかちにどういう言葉を使えばいいかを考えるのではなく、相手との言葉のやりとりを重視すること。日本で、あまり親しくない人に自分を伝えようとする場合に心がけていることと、やることは一緒なのだ。自分は英語ができない、という心の縛りが、会話をぎくしゃくさせてしまう。It’s difficult to explain.などと前置きして、I…と何度出てきてもいいから短い文で、具体的な言葉をつないで「会話して」いけばいいのだ、というアドバイスは、間違いなく英語に不慣れな人間の肩の力を抜いてくれる。

肩の力を抜いてくれるという意味では、著者がある本から紹介してくれている「海外生活をするにあたって重要な3つの能力」などはとてもよい。最後にそれを書き留めて終わりにしたい。

1. Sense of humor(ユーモアのセンス)
2. Low goal/task orientation(目標や課題を高く掲げすぎないこと)
3. Ability to fail(失敗できる能力)
(p152)