2006-12-01から1ヶ月間の記事一覧

谷川俊太郎「風穴をあける (角川文庫)」

誰もが知っている詩人である谷川俊太郎のエッセイ集。 彼の詩と文学についての考え方だとか、芸術についてだとかの文章が収められているが、何より心をひきつけるのは、本の後半にある彼の友人への思いをつづる文章だ。その中でも、武満徹ら、すでに亡くなっ…

日垣隆「すぐに稼げる文章術 (幻冬舎新書)」

来年に向けて、最後に良い意味で刺激を受けた。身もフタもないタイトルだが、けっこうその通りの内容である。「すぐに」かどうかはわからないが、「稼げる文章術」であることは確か。帯に本人が書いているように、「手の内」を明かしすぎではないかと心配に…

安田敏朗「「国語」の近代史―帝国日本と国語学者たち (中公新書)」

「声に出して読みたい日本語」以来、伝統・文化ある美しき日本語を学び、その心を大切にしましょう、とかいう偉い方のありがたい言葉をしばしば耳にするようになった。伝統あるものを大切にするのはいいことだ、と言われるとまさにそのとおりで何も言うこと…

絲山秋子「海の仙人 (新潮文庫)」

「イッツ・オンリー・トーク (文春文庫)」に続いての文庫化で、さっそく読む。小説はあまり読むほうではないが、時々気になるものは手にしてしまう。 この人は、会話がいい。なにげない会話は、登場人物一人一人の人間をうつしながらしかし押し付けがましく…

後藤正治「ラグビー・ロマン―岡仁詩とリベラル水脈 (岩波新書)」

30に達していない僕のラグビーの記憶は、平尾と大八木の神戸製鋼、そして明治の試合をスタンドから見守る老将北島監督の顔から始まっている。思わず買ってしまったこの本は、北島監督でも、並び評される早稲田の大西監督でもなく、平尾と大八木を輩出した…

鹿島茂「社長のためのマキアヴェリ入門 (中公文庫)」

マキアヴェリの「君主論」は、「君主」を「社長」と読み替えることで、現代にも通じるビジネス書として読めるのではないか。そう考えた著者が、君主論のエッセンスを読み解いたのがこの本。 「社長のための」とあるが、世の社長の数などたかがしれているし、…

契約更改で主張するのは、自分のためだけではない

プロ野球の契約更改が盛んな時期だ。振り返ってわが身も、来年の処遇を交渉すべき時期で、悩ましい。 よくプロ野球選手の年俸に関して、「チームのバランスがあるから」という球団関係者のコメントがある。長年やってきた選手よりも、ぽっと出の選手の給料が…

樋口敬二編「中谷宇吉郎随筆集 (ワイド版岩波文庫)」

中谷宇吉郎は、北大での人口雪の研究が有名な物理学者であり、寺田寅彦の弟子でもある。 寺田寅彦の随筆を読んだことがあるだろうか。夏目漱石の弟子ともいえる彼の随筆は、科学的なものの見方というものがどういうものかをわかりやすい言葉で伝えてくれてい…

説教くさいぞ君は

どうして人は自分が正しいと思い始めると説教くさくなるのだろう。自分に自信がなかったり、謙虚になれているときは周囲を見る余裕があって、話していても説教くさくならない。そういうときの言葉には人を納得させる力があるのに、優位な立場にたった後の言…

高橋哲哉「教育と国家 (講談社現代新書)」

今さら、ではなくて、今だからこそ読んでもいいのかもしれないと思い、読んでみた。 「最近の子どもの起こした痛ましい事件は、自由を重んじてきた戦後教育のゆがみが出たものだ」「だからもう一度、公共性や社会を愛するという大事なことを教えねばならない…

山田ズーニー「あなたの話はなぜ「通じない」のか (ちくま文庫)」

「ほぼ日刊イトイ新聞」で長らく連載をしている著者の、3年前の本が文庫化。 小論文の指導に、コミュニケーションという観点を持って長く関わっている著者の文章からは、ネットでの連載でもそうなのだが、その心の熱さが伝わってくる。他人とのコミュニケー…

野地秩嘉「エッシャーに魅せられた男たち 一枚の絵が人生を変えた (知恵の森文庫)」

羽生さんのお勧めの帯があって、ミーハーにも買ってしまった(解説も書いておられる)。 錯視などを利用しただまし絵、一定のパターンが繰り返され不思議な雰囲気をかもし出すポスター…。版画家、エッシャーの作品は、作者の名前こそ知らねど誰しもが一度は…