鹿島茂「社長のためのマキアヴェリ入門 (中公文庫)」

マキアヴェリの「君主論」は、「君主」を「社長」と読み替えることで、現代にも通じるビジネス書として読めるのではないか。そう考えた著者が、君主論のエッセンスを読み解いたのがこの本。
「社長のための」とあるが、世の社長の数などたかがしれているし、そもそも彼らはこんなお得で薄っぺらそうな本には手を伸ばさないだろう。もしくは、もう既に原書にあたっているかもしれない。そう宣伝されてはいないが、この本は、そんな社長のための本ではなく、社長の考え方を知るために平社員が読むべきなのである。
こちら(http://d.hatena.ne.jp/sivad/20060728#p1)にいみじくも書かれているように、君主や社長になれる人は、帝王学とでもいうべき考え方を自分のものとしている。それは、統治の仕方でありまた、部下に自分がどう見えるか、をコントロールするやりかたである。ニコニコ顔の社長さんが実はとても腹黒い人で、身近な人にはひどく理不尽にあたる、というのは良く聞く話である。
簡単に書いてしまえば、この本で書いているのは、君主というのは狡猾でなくてはならない、ということだ。そしてそれを見せないように、憎まれ役を置いたり、いいとこどりをしたりしなくてはならない。この本を読んで君主論のエッセンスを感じ取ったときに、それってありなのかよ、とか俺にはできないな、と思う人もいるだろうと想像する。しかし、勝者と敗者を分けるのは、勝者がそのような考え方で、常に人を利用することを厭わないことを、知っているかどうか、そして自分でもそういう場になったときに、狡猾な行為がさらっとできてしまうかどうか、である。
どちらかというと人に使われてしまうなぁと感じている人は、読んでおいて損はない。