2009-01-01から1年間の記事一覧
妻を亡くし老け込んだ主人公の父の脳に主要が見つかった。ユダヤ人移民として、苦労しながら働いてきた彼は、作家である息子へ思い出話を繰り返し、身の回りの品を片っ端から息子にあげていきつつ、自分の近づいている死との折り合いをつけようとしている…。…
新書なのだが、とっても、ぶあつい。ページ数だけで、著者の力の入り方がわかる。書きたいこと、読んでほしいことはたくさんある。さらに言えば、一人でも多くの人に手に取ってほしいから、なんとか新書にしたい。そういう気持ちがパッケージだけでよくわか…
今年、中公新書は刊行2000冊を迎えた。その際に、「中公新書の森 2000点のヴィリジアン」という小冊子が無料で配布されていたのをご存知の方はいるだろうか。これがまた新書ファンにはうれしい冊子で、この硬派な新書の魅力を語る対談の他、さまざまな知識人…
ひさびさにがつんとやられた気分。英語のリーディングを甘く見ていた。 英語など、時間をかけて辞書を引けば何でも読めるもんね、と信じていた自分を叱りたい。先入観や文章の雰囲気で曖昧に読んで、なんとなく分かった気になっているのは違うのだ。それは、…
毒舌で「濃い会話」をしよう、本音を語り人間関係を進展させよう、と提案し、芸能人の方々の「説得力のある」毒舌の紹介を通していかなる毒舌が人を引きつけ、説得しうるのかを語っていく。 この本自体はさらっと読めて中身も濃くはないが、毒舌というもの、…
本の特集を組む雑誌は珍しくないが、そんななかには、ブックカフェで読書っておしゃれじゃないですか?というようなスタイルを見せたいだけの、本の紹介ががっかりするほど薄いものもある。 しかしこれはどうだ。もっと適任がいるのではないか?というような…
吉田修一さんの本は何冊か読んでいる。この本は、単行本が出た年に話題になって覚えていた。文庫化されているのを見てすぐに購入。とても読みごたえのある、じっくり考えさせられる物語。年末年始にぜひ、と薦めたい。九州で出会い系絡みの殺人事件が起こる…
「絶対音感 (新潮文庫) [ 最相葉月 ]」「[rakuten:book:10970863:title]」などを著した最相葉月さんによる、最新科学研究を取材したノンフィクション。 恐竜や地震などのスケールの大きなものからウイルスや黄砂に至るまで、最先端の研究を行っている現役…
先日読んだ本に引き続き、同じ著者の英語読解に関する本をもう一冊。英語表現に関する、初学者向けのエッセイである。 とはいってもあなどれない。英語も、当然のことながら一つの言語であって、同じ文章から必ずしも一つの意味だけが引き出せるわけではない…
「自由」を、当たり前に手に入るもの・当然そうであるべき状態と思うか、そうでないかは人によってかなり違うだろう。 この本で著者は、自由を「支配からの解放」を超えた価値として考えている。自分の思い通りにことを運べること、としての「自由」の価値。…
いまさらな感のあるこの本を、例の古本チェーンで見つけて読んでみた。 一時期かなり話題になって、いろいろなブログで感想が載っているのをあちこち見た。また、著者本人がテレビに登場し、本の内容が取り上げられているのを見たりもした。ということでそれ…
経済・金融に関する疑問を経済新聞の専門家に聞いてみる、というポッドキャスト番組を文庫化したものとのこと。正直なところ、大江アナの写真に釣られて買ってしまったのだが、きちんと読んでお勉強になった。 ポッドキャスト番組を編集してすぐに出したよう…
誰が聞いても間違いのない落語家、立川志の輔さんと、小説を書く和尚、玄侑宗久さんの対談本。寿限無、芝浜、あくび指南、蒟蒻問答など、落語の演目をテーマにありとあらゆるテーマについて語られる。 対談というのは難しいのだろうなと思う。よほど話を聞い…
英文を読むのは得意だ。英語に関して読む本は、だから、英語をどう書くか、ということに関する本が多い。ひさびさに「英語をどう読むか」に関する本を読んだのは、人に教える機会があって、「自分はなぜ読めるようになったのか」ということを否応なく考えさ…
ユニクロの創業者であり社長である著者が、創業以来の歴史とその企業理念、経営哲学を語る。5年以上前の本だが、さすがにタイトル通り、失敗しては前を向いて立て直していくそのアグレッシブさを読まされては、おもしろくないわけがなかった。 ぶらぶらとし…
中島敦「山月記」や太宰治「走れメロス」などの古典的名編を、「夜は短し歩けよ乙女」の森見登美彦さんがリメイク。現代の京都を舞台に、大学生が大活躍。 5編入っているうち、原作を読んでいたのは上に書いた2編。これはいかんだろうと、芥川龍之介「薮の…
タイトルが面白いなと思いつつ、それとはあまり関係のないインタビューがさらっと読める形でまとめてあるのかと予測したが、さにあらず。実に骨太で、得るところの多い一冊になっている。これは面白い。 忌野清志郎さんが、何も知らずにロックをはじめたころ…
「リーダーシップの旅」が面白かった金井壽宏さんが、今度は教育学者の中原淳さんと手を組んで、働く大人の学びについて、どのようにマネジャーが学び成長していくのか、について語り合う。最近、下の人を育てる立場にはできればなりたくない、という気持ち…
日本屈指の自然科学の研究所である理化学研究所(理研)。この組織がどのように生まれ、日本の科学の発展にどのような影響を及ぼしてきたか…。第3代所長の大河内正敏と、彼が力をふるった戦前戦中の科学者の活躍を中心に描かれる。 「科学者の楽園」とはノ…
進化論を提唱したダーウィンが生まれて200年。その間の科学の急速な進歩にも関わらず、進化論の先見性と与える影響の幅広さ、さまざまな研究に及ぼす示唆は決して薄れていない。その思想や人物についての本は数多くあるなか、この本は、ダーウィンの研究…
マンションを買っただの、買わないのかだの、今は買うべきではないだの、いろいろな声が聞こえてくる。同時に、毎日のようにマンションの広告がどっさり入ってくる。 そんなこんなでいろいろ読んで考えてみようと最近思っていて、まずは古本屋で100円だった…
絲山さんの小説のファン(それほどたいそうなものではないが)なもので、文庫化された初のエッセイ集を発見してうれしかった。 特にこの方のことを良く知っていたり追っかけているわけではないが、ちょっと読んで「この人らしい」と思えてしまうところがさす…
ハワイ関係本、4冊目。中公新書ということもあり、少しお勉強系。 池澤夏樹さんの「ハワイイ紀行」ではあまり触れられていなかった移民の歴史が、実質的に章2つ分をかけて書かれていて、特に勉強になった。日本というルーツを持ちつつ、アメリカという国の…
ハワイ島で稼働中の、日本が世界に誇る「すばる望遠鏡」。10年前から観測を続け新たな発見を次々ともたらしているこの望遠鏡が、どのような経緯を経てかの地に建設されたのか、その苦労を計画の推進者である研究者が語る。 研究者にもいろいろな分野があり…
英語を日本語に翻訳するときに感じる、大きなギャップ。これがどのような発想、どのような世界のとらえ方の違いによっているのか。実際の翻訳に関わってきた英文学者が、言語学の知見を参考にして考えていく一冊。 どの章でもまずは、英語を日本語に、日本語…
昨今の新書らしいタイトルとボリューム、しかしこれが面白い。 全ての社員が成長できるような仕組み作りに関わってきた人事コンサルタントの著者が、どうすれば社員が上を向いて幸せに働けるのか、について思うところを述べたもの。 成果主義で社員を評価し…
英語論文を書く際のコツに関する本を一冊。こういう科学英語に関する本は、とにかく買って読んでみることにしている。 英語だけでなく、『日本語にも構文がある(p309)』という考えをもとに、自然な日本語と英語の対応を構文単位で考えて提示していくこの本…
久々にミステリーを。 たいして本を読まなかった中高生時代に片っ端から読みこれは面白いと思ったのが、著者の「空飛ぶ馬」から始まる「円紫さんと私」シリーズ。ふと、新しいシリーズものが文庫で出ていると知って読んでみた。 戦前、昭和初期を舞台にした…
進化と系統学・統計学を専門とする農学系の研究者として、「種とはなにか」など形而上学的な問題について発言してきた著者の、「系統樹思考の世界 (講談社現代新書)」に続く第二弾。 帯がかっこいい。もし、昔の講談社現代新書だったらどんなカバーになった…
博士号を持つ高学歴の若者が仕事にありつけず、「ワーキングプア」とでもいうような状況に陥っている現状を書いた(実は読んでいないが)「高学歴ワーキングプア」が話題を呼んだ著者(こちらにこの本を出すにあたってのコメントがありました)が、ではどう…