薬袋善郎「英語リーディングの真実―続・英語リーディングの秘密」

ひさびさにがつんとやられた気分。英語のリーディングを甘く見ていた。
英語など、時間をかけて辞書を引けば何でも読めるもんね、と信じていた自分を叱りたい。先入観や文章の雰囲気で曖昧に読んで、なんとなく分かった気になっているのは違うのだ。それは、原文をきちんとわかった、というのとは違う。
…ということを嫌というほど思い知らせてくれる本。ポイントを自分でまとめてみるとこういうことだ。
「論理的におかしくないか疑問を持ちつつ英語を読み、疑問を感じる箇所があったら、あいまいさを残さない解釈になるように英文を(指示語の指すもの、単語の意味などを含め)徹底的に再検討する」べし。

要するに、すっきり論理がはまるように感じられるまで、じっくり読むべし、ということだ。意味を知っていると思う単語も、全く違う意味で使われているかもしれない。直前の単語をさすと思っていた指示語も、実はかなり複雑にもっと前の単語を指しているかもしれない。さらっと読んで分かったつもりになっていてはわからない、奥の深いことを言っている文章かもしれない。
さらっと読むクセがついてしまっていると、こういうことに注意するのはかなり難しい。意識的に、指示語の指すものや接続詞の意味などは、お前が思っているのと違う可能性があるぞ、と言い聞かせないといけない。この本を読んだおかげで、そうして徹底して検討することの重要性を叩き込まれた気がした。
特にやられた、と思ったのが、Play tennis after school.という命令文を例文として、

英語とちがい日本語ではふつう、動詞は文末に来ます。そのために、英文を内容を考えずに単純に日本語に置き換えると、かならず動詞を最後に訳すことになります。その結果、自動的に「その動詞が表わす動作をする(あるいは、しない)」ということがその文のいいたいことであるように感じられてしまうのです。(p89)

ということを述べ、「前提」と「焦点」を動かして文の言いたいことを探っていくことの重要性について語られる章だ。ベタだが本当に目からウロコが落ちる気分であった。辞書とか文法では語れない読む時の考え方、みたいなものがあるとはこれまで思っていなかったし、それなしでも読んでこられたと思っていたが、それは違う!のである。

Time誌などから文章を引用して作られた問題も、著者の考える大事なことを確認したり、考えさせられたりするためにとても良く、ためになる。簡単なようで難しく、全てクリアするのにけっこう時間がかかってしまった。

英語に自信がある人も、ぜひ一度読まれんことを。