2010-11-01から1ヶ月間の記事一覧

開高健「夏の闇 (新潮文庫)」

何らかの振り返りたくない体験を経て、人生に「すりきれかかっている」主人公と、孤独を抱えつつ精気に溢れた女。久々に再会した男女の、海外でのひっそりとしたひと夏の生活。底辺に近いところで働きながら、博士号をとろうと勉学にいそしんできた女がこれ…

塩野七生「日本人へ リーダー篇 (文春新書)」

2003年から2006年にかけての、著者の文藝春秋での連載をまとめたエッセイ集。イラク問題から、リーダー論まで、読み応えがある。塩野さんのことを、お堅めの保守主義者と見てしまいがちだったが、反省している。この世界状況において、アメリカにも見習うべ…

Paul J. Silvia「How to Write a Lot: A Practical Guide to Productive Academic Writing (LifeTools: Books for the General Public)」

ほとんど読んだことがない英語のペーパーバックも、読む目的がはっきりしていると読み通せるものである。 この本では、心理学の研究者である著者が、多忙で時間のない研究者がいかにしてコンスタントに論文や申請書、本などを書いていけばいいかについて語っ…

富永茂樹「トクヴィル 現代へのまなざし (岩波新書)」

革命後のフランスに生まれ、アメリカを旅して『アメリカのデモクラシー』を書いた思想家、トクヴィル。 「〈私〉時代のデモクラシー」という本を読んだ時に、気になっていた。革命や、アメリカ合衆国の成立を経て、人びとが平等になっていくと彼らはどのよう…

伊坂幸太郎「砂漠 (新潮文庫)」

あのね、目の前の人間を救えない人が、もっとでかいことで助けられるわけないじゃないですか。…今、目の前で泣いてる人を救えない人間がね、明日、世界を救えるわけがないんですよ(p110) 学生時代に時おり遭遇する、ともにいた仲間が起こした奇跡のような…

内田樹「街場のメディア論 (光文社新書)」

日本に関わるさまざまな問題は、日本のメディアの抱える問題でもある。日本の抱える問題を解決するには、メディアを変えなければならない。 これは、学部生のときに入っていたゼミの先生がいつも強調していたことでもある。 その意味するところを僕がどこま…