2008-03-01から1ヶ月間の記事一覧

吉田修一「最後の息子 (文春文庫)」

芥川賞作家のデビュー作。新宿二丁目のバーのママと同棲する気ままな男の生活を描く表題作を含めた3作。どれも出身地である長崎の色が良く出ていて、新鮮だった。 男の子の生態とでもいおうか、そういうものがとてもリアルに書かれているように思った。まっ…

森史朗「松本清張への召集令状 (文春新書 624)」

死してなお、その原作のドラマ化が絶えない松本清張。その担当編集者をやっていた著者が綴る、権力を嫌った孤高の大作家のルーツ。 彼の作品はまったく読んだことがないのだが、この本はその魅力を押し付けがましくなく、しかし存分に伝えてくれた。 さまざ…

中村澄子「1日1分レッスン! 新TOEIC Test 千本ノック! (祥伝社黄金文庫 (Gな7-6))」

これまで、英語自体を目的として勉強してきたことがほとんどない。そのため、TOEICも受けたことがない。 この人の前の本は二冊ほど目に入ったときに買って、やってみたが、ふーんそんなもんかとそのときはそれで終わっていた。 しかし、今年は海外学会に行く…

三浦しをん「夢のような幸福 (新潮文庫)」

『あやつられ文楽鑑賞』刊行記念のイベント(http://d.hatena.ne.jp/PineTree/20070730/p1)ではじめて目にした著者の、着物で、落ち着いて清楚な雰囲気を思い出しながら読むと、このエッセイのあまりのくだけぶりがとても面白かった。 本を愛し、あれこれ好…

「めがね(3枚組) [DVD]」

「かもめ食堂」と同じ監督さんの昨年公開の作品。同じように、レンタルで鑑賞。 小林聡美ともたいまさこがでてくるところは前作と同じだが、二人の立ち位置は前回と反対のように見えた。「かもめ食堂」では、小林聡美がどちらかといえば「主人」としてどっし…

清水義範「早わかり世界の文学―パスティーシュ読書術 (ちくま新書)」

本を少し読み始めたころ、この人ほど面白く思える作家はいなかった。文章だけでこんなに面白くていいのか、と驚きとともに、尊敬してしまった覚えがある。ある意味、清水義範はヒーローだった。もちろん、今昔に読んだものを読んでもその面白さは変わらない…

城繁幸「3年で辞めた若者はどこへ行ったのか―アウトサイダーの時代 (ちくま新書)」

前著「若者はなぜ3年で辞めるのか?」が、世代間格差と若者の絶望感について述べて話題になった著者の第二段。さまざまな若者に話を聞き、その実例をもとに、その後の状況もまじえて、前著でも述べていたテーマにより深く迫る。帯に『もっとワガママに生き…

「舞妓Haaaan!!! [DVD]」

阿部サダヲおそるべし。 はちゃめちゃだと聞いており、実際マンガみたいだが、中盤からは案外手堅く順を追って話が進んでいくのに感心した。と言っておいてなんだが、阿部サダヲは最後までテンション高く突っ走っており、それゆえにはちゃめちゃな映画にあり…

伊藤章治「ジャガイモの世界史―歴史を動かした「貧者のパン」 (中公新書)」

中公新書には、「コーヒーが廻り世界史が廻る」のような、栽培・園芸作物と世界史についての面白い本が多くあるが、そのレパートリーに新たに、興味深い一冊が加わった。副題にあるように、その栄養価で貧しい人の暮らしを支えたジャガイモにまつわる挿話を…

関川夏央「現代短歌 そのこころみ (集英社文庫)」

たまには毛色の違うものを読んでみたくなり、現代短歌の歴史をさまざまな歌人の歌とともに紹介するこの一冊を選んだ。 さすがにその名前は教科書にも載っていた気がする斎藤茂吉の亡くなった一九五三年、その翌年の寺山修司と中城ふみ子の出現からの五十年。…