吉田修一「最後の息子 (文春文庫)」

芥川賞作家のデビュー作。新宿二丁目のバーのママと同棲する気ままな男の生活を描く表題作を含めた3作。どれも出身地である長崎の色が良く出ていて、新鮮だった。
男の子の生態とでもいおうか、そういうものがとてもリアルに書かれているように思った。まっすぐな反面バカだったり、無口だけど女性に対する熱意がすごかったりする若い男のさまざまなありかたが出てきて、ああ、こういうこと考えて暮らしてたかもなぁなどと思いながら読むのがとても面白かった。大人になってから振り返るとさわやかなように見える生活の中にも、いろいろとどろどろ抱えたものがあるのだよなぁ。
一方で女の子の影は若干薄い(そのせいでどうこうというのは特にないけど)。女性が読むとどう感じるのかに興味がある。