2010-04-01から1ヶ月間の記事一覧

熊野純彦「西洋哲学史―古代から中世へ (岩波新書)」

高校生のとき、失礼ながら、倫理の時間は寝ているか別な教科の内職をしていた。今になってみると、あのときよくわからない言葉をぼやぼやと語っていた倫理の先生が、どれだけ奥深いことを言っていたかもしれないという思いにとらわれる。ということで、この…

仲正昌樹「集中講義! アメリカ現代思想 リベラリズムの冒険 (NHKブックス)」

子どもみたいな感想だが、アメリカはすごい、と思った。この本もまた、「<私>時代のデモクラシー」を読んだときと同様の問題意識があって読んだ。つまり、競争的・自己責任の社会において、公共の利益というか全体としての生き心地のよさ、のようなものを…

最相葉月「星新一〈下〉―一〇〇一話をつくった人 (新潮文庫)」

上巻の感想はこちら。下巻は、ショートショートで有名な星新一が、作家となり名前が売れて後の生涯をたどる。 消耗品にはならない。なりたくない。それは、ひとたび多くの読者をもち、自分の作品の多大なる影響力にうち震えた経験をもつ作家の背中に取り憑い…

宇野重規「〈私〉時代のデモクラシー (岩波新書)」

おもしろかった。 政治思想史の研究と、現代を表わすような本や考え方を読み解いたものがうまくかみ合っていて、現代の「デモクラシー」が困難な状況が説得力のあるかたちで浮かび上がっていると感じた。 これから、自分のいる場にどう生かしていくべきか、…

服部勉「大地の微生物世界 (岩波新書 黄版 390)」

1987年の新書を、アンコール復刊とのことだが…これはすばらしい。 この本をアンコールしてくれた人に感謝したい!レーウェンフックとパストゥールからはじまる話は、普通によくある微生物学の入門書かと思わせるが、そのくらいでわざわざ復刊されるわけもな…

日垣隆「知的ストレッチ入門―すいすい読める書けるアイデアが出る (新潮文庫)」

文筆業で稼いでいるわけでもないのに、自分の仕事と関係のない本を日々ちくちくと読んでしまう自分が、『アウトプットを前提にしないと、インプットはほとんど意味をなしません(p54)』という著者の言葉を完全に理解できているとは思いがたい。 しかし、こ…

司馬遼太郎「街道をゆく 24 近江散歩、奈良散歩 (朝日文庫)」

旅行をするときに特別読みたくなる本、自分が旅行している雰囲気をより高めてくれる本がある。『街道をゆく』シリーズはまさに、ぼくにとってそういう本である。 以前も、このシリーズの『大徳寺散歩』を読んでから実際に京都にいってみたが、これがよかった…

セネカ「生の短さについて 他2篇 (岩波文庫)」

『自省録』をあらわしたマルクス・アウレーリウスと並ぶローマのストア派の哲学者が、いかに有限な生を生くるべきか、を語ったこの一冊。 自分に向けた日記的なものとして、そういう口調で書かれた『自省録』に比べると、少々かしこまった書き方であるが、文…

最相葉月「星新一〈上〉―一〇〇一話をつくった人 (新潮文庫)」

待っていた本が文庫になった!嬉しくてすぐ飛びつく。 ノンフィクション作家最相葉月さんが書いた、ショートショートの名手、星新一の評伝。 以前、星新一が、実業家であった父の若い頃について書いた評伝「明治・父・アメリカ」を読んで、こう書いたことが…

大竹文雄「競争と公平感―市場経済の本当のメリット (中公新書)」

経済学者の著者による、経済に関してやさしく語られたエッセイ。 日本人が市場経済のメリットをきちんと認識していない、ということをデータなどから説いていく序章から、公平感や働くことについて日常的な話題から経済学的に考えていく二章、三章と、経済学…

金子光晴「どくろ杯 (中公文庫)」

すごい本を読んでしまった。一人の詩人が、男女関係のごたごたと日本での逼塞感から、意を決して夫人とともに中国へと渡る。これが、その後5年にもわたって世界を回る放浪生活のはじまりだった…。昨年末に出た「BRUTUS」の本の特集で、金子光晴の自伝を山崎…

大塚英志「大学論──いかに教え、いかに学ぶか (講談社現代新書)」

マンガを教える大学を作り、さまざまに工夫をこらして学生に教えた経験から、大学のできること、教え教わることについて著者が考えたエッセイ。著者は、大学という場所で教えることを、とても楽しんでいるように読める。 ぼくが大学という場所がいいなと、思…