2007-01-01から1年間の記事一覧

2007年度の読書記録まとめ〜印象に残った5冊

1年間で読んだ本は、およそ85冊。冬休みにスパートをかけたが、とにかく生きることで精一杯で、本を読む余裕が少しなかったか、久しぶりに100冊を割ってしまった。今年はもう少し読む時間をつくりたい。 せっかくなので、印象に残ったもの、読み返すかもし…

山本博文「江戸城の宮廷政治 (講談社学術文庫)」

徳川家の天下がほぼ定まる大阪の陣から、3代将軍家光の時代まで、大名の国替えが相次ぐなか、細川家がいかにして『外様大名の典型的な優等生(p166)』と呼ばれ熊本一国を任されるに至ったかを、細川家の父子の往復書簡から描き出していく。 出てくるのは、…

「爆笑問題のニッポンの教養 現代の秘境は人間の"こころ"だ 芸術人類学」

有名な人だが、その仕事とは関係のない一般向けの本(「僕の叔父さん 網野善彦 (集英社新書)」)しか読んだことがない中沢新一先生。 多摩美術大学で芸術を教える彼を、爆笑問題が訪ねるテレビ番組を書籍化したもの。番組自体は見ていないが、彼の考えるとこ…

山田玲司「非属の才能 (光文社新書)」

表紙裏の要約には、『「みんなと同じ」が求められるこの国で、「みんなと違う」自分らしい人生を送る方法はあるのか?』とある。 さまざまな人々にインタビューをしてきた漫画家の著者が、「そういう方法は確かにある」ことをさまざまな実例から断言し、読者…

橋本治「日本の行く道 (集英社新書 423C)」

くねくねと強靭な思考を繰り広げる著者の新書新刊。ちょっと上段に構えたタイトルが、大丈夫だろうかと思わせるが、そこはいつもの橋本治節で楽しませてくれる。本当に本人がどう思っているかは推測でしかないが、この人は本気で「日本の行く道」を心配して…

司馬遼太郎「街道をゆく〈34〉大徳寺散歩、中津・宇佐のみち (朝日文芸文庫)」

歴史小説作家、司馬遼太郎の紀行文としてあまりに名高い「街道をゆく」。しかし、これまで新聞記事や学校の授業などで断片的にしか読んだことがなかった。京都へ行こうと思い立って、それを機に一冊購入。 読みたかったのは、前半の「大徳寺散歩」のパート。…

村上春樹「東京奇譚集 (新潮文庫)」

「ひとまず読んでおこうか」というくらいの気持ちでも、名前で買わせてしまうのが村上春樹の力だろうか。 すうっと入れて、すうっと読める短編集。ちょっと不思議な話の世界にすんなり入り込ませてくれる会話がうまい。『やれやれ』というため息とか、『女の…

平山廉「カメのきた道 甲羅に秘められた2億年の生命進化 (NHKブックス)」

化石の研究というと恐竜やアンモナイトを思い出してしまうが、これらが発掘されるのと同時代の地層から多くの仲間が見つかる動物がいた。今でもおなじみのそれが、カメである。この本では、化石爬虫類の研究をおこなってきた著者が、発掘の苦労話も含めて、…

中島隆信「子どもをナメるな―賢い消費者をつくる教育 (ちくま新書)」

帯が、「さよなら!モラル教育。」となっていて、本の内容をよく示している。 子どもに勉強する意味を教えるのはとても難しい。著者は、「将来まともな仕事をするため」とか「生きていけないよ」とか「大人になったらよかったと思う」とか、そういう類の動機…

今年の業務終了

本業も副業も今日で年内はほとんど終了。ひたすら動いて働いた自分にお疲れさま。 来年は時間を本業のほうにもっと使って、いい仕事をチームでたくさん出せるように頑張りたい。今年はあと旅行と、読書とその記録に使うつもり。本はまだ読んだものも詠んでな…

ひさびさ続きの忘年会

ひさしぶりに身近であったことなど。 チームで忘年会をやった。貧乏な我々のチームであるので値段重視で後輩が選んでくれた。安い飲み放題→安い飲み屋の2階→カラオケ朝まで。 来年どうなるのか、どうするのか、など、ひさびさに熱く語ってしまった。熱くな…

梨木香歩「村田エフェンディ滞土録 (角川文庫)」

舞台は100年前のトルコ。主人公の日本人留学生、村田の留学先での交流と学問の日々。 村田は「家守綺譚」の主人公の友人であり、時代的にも同じに設定してある。 さすがにこの人の小説は面白い。トーンとしては真面目なところで、塩梅のいいユーモアを交えて…

寒川旭「地震の日本史―大地は何を語るのか (中公新書)」

「地殻変動によって造られた島国(「はじめに」より)」である日本。その宿命として、プレートの潜り込みによる地震のほか、「地球の表面を覆う岩盤に生じた傷(p6)」である活断層による地震も活発だ。繰り返される地震を歴史的に振り返ってみようという一…

福土審「内臓感覚 脳と腸の不思議な関係 (NHKブックス)」

緊張すると腸の調子が悪くなり、腹痛などを伴うことは経験している人も多いだろう。こういった症状は「ストレスですよ」とか「心因性のものですよ」などといって片付けられてしまうことも多いだろうが、社会生活に支障をきたすまでになると、りっぱな病気な…

海堂尊「死因不明社会―Aiが拓く新しい医療 (ブルーバックス)」

おどろおどろしいタイトル。表紙は黄色だがれっきとしたブルーバックス。 帯にあるように、「このミステリーがすごい!」大賞作家が現代医療についてまわっている問題を提起するノンフィクション。そのミステリー自体は読んだことはないのだが、実に興味深い…

縣秀彦「天文学者はロマンティストか?―知られざるその仕事と素顔 (生活人新書)」

国立天文台普及室長である著者が、天文学者とはどのような仕事をしている人なのか、について優しく語る。 もちろん天文学は実際にすぐに役に立つ学問ではないので、その道に進む人はたいへんだろうし、資金の調達も苦労がいるだろう。そのあたりのことも、臆…

齋藤孝「日本を教育した人々 (ちくま新書)」

「ウェブ時代をゆく」が置いてなくて、それでは久々に齋藤先生でも読んでみようと。 明治から昭和にかけて、日本人全体を教育するような役割を果たした人間について、その成し遂げたことや教育観を述べていく。 齋藤孝の本は一つの書評のようである。一冊か…

山崎ナオコーラ「人のセックスを笑うな (河出文庫)」

題名と作家名があまりにもインパクトがあるので覚えていた文藝賞受賞デビュー作。 映画化するせいか、文庫になっており平積みにされているのを発見(なったのはそれなりに前のようだ)したので読んでみようかと買ってみる。 ちなみに、作者は女性で、主人公…

佐藤優「国家の罠―外務省のラスプーチンと呼ばれて (新潮文庫)」

文庫化。はやい。文庫になったらすぐ買うぞ、と密かに決めている本というのは、心の表面には上がってこないもののけっこうあるようだ。「あ、これは買うんだ」と文庫の棚に並んでいるときにすぐに感じるのである。 というわけでこの本。外務省でロシアとの外…

高見沢潤子「兄小林秀雄との対話―人生について (講談社現代新書 215)」

小林秀雄というと、難しい箴言が出てきそうなイメージがある。この新書は昭和四十五年に出たずいぶん古いもので、小林秀雄の実の妹である著者が兄との対話を綴っていく形式になっていて、楽に読める。 言葉使いも平易なら、その語るところも実に易しい。しか…

東京藝術大学創立120周年企画「岡倉天心―芸術教育の歩み」

これは面白かった! 「茶の本」で有名な岡倉天心は、東京藝術大学の前身の創立に携わったことで有名で、芸大には初代校長である彼の立派な銅像がある。今回行ったのは、初代校長である岡倉天心と彼の理想、そして芸術教育の現場を見せた展示。 美術大学の創…

橋本治「橋本治という行き方 WHAT A WAY TO GO! (朝日文庫 は 27-1)」

この人も大好きな物書きの一人。全く偉そうでないところがまたいい。 もともと絵描きであった著者の文章は、いつもくねくねしている。心の持ちようがとても自由な人で、自分で考えたことに行き着く過程を含めて全て文章にしてしまうからだ。読者は、いつも彼…

京極夏彦「邪魅の雫 (講談社ノベルス)」

友人に借りて出る作品を全て熱心に読んだのは高校生の頃だったろうか。10年ぶりに、別な場所で再会し親しく付き合うようになったその友人が、読んでみないかと貸してくれたのがこれ。彼といろいろ行動をともにし、話していた頃も、そのころひたすら読んでい…

加藤文元「数学する精神―正しさの創造、美しさの発見 (中公新書 1912)」

現役の数学者が、一般向けの数学の本を書くのは、難しいことなのだろうなと思う。サイエンスの本はけっこう読むが、生物系が一番書きやすそうだ。一般の人にとっては、身近に覚えがあるもの、もしくは動物や人間の話が中心になるものが読みやすいだろうから…

ドストエフスキー「罪と罰〈下〉 (岩波文庫)」

だらだらと時間をかけながらも読破。 これまた精神に負荷のかかる読書であった。しかし、途中で退屈に思うことはまったくなかった。ずーっと面白いぞ、面白いぞ、と思いながら読んでいた。 本読みを自称しながら、名作だのと呼ばれるものは面白くないものだ…

小谷野敦「日本の有名一族―近代エスタブリッシュメントの系図集 (幻冬舎新書)」

「もてない男」であまりにも有名な著者が、さまざまな日本の有名な一族の家系図とその個別の人物の略歴を紹介する一冊。 有名一族、とあるが、もちろん同じ家系図に載っている一族の中には、それほど有名でない人もいる。もちろん、有名かどうかは読む人がど…

ゆっくりしたい

今日はひとりごと。 平日は早朝から深夜まで、土曜日も仕事、日曜日も用事があったり…で休む暇がありません。 書評のペースがまったく上がらないのはそのせい。 平日もう少しゆるめにすればいいんだろうけど、そういう気持ちにまったくなれない。いろいろな…

高田京子・清澤謙一「ニッポン最古巡礼 (新潮新書)」

『日本最古の』と名のつくさまざまな物件を巡る旅。条件は、現役で使われており、教科書に載っているようなものでないこと(必ずしもそうなっていないものもあるが)。 そういう古いものは近畿地方などに集中しているかと思いきや、この本で紹介される物件は…

蔵本由紀「非線形科学 (集英社新書 408G)」

新書には珍しいずばっとしたタイトルに逆に惹かれた。普通こういうのを書くときは、もっとひねったタイトルをつけたり気を引くような文句をはさんだりするものだが。ここまでひねらずに直球でくるところに、著者の研究に対する誇りとか自信を感じる。 数式を…

「アイデン & ティティ [DVD]」

友達に勧められて、レンタルビデオショップに毎週通ったが、いつも貸し出し中で一月も待ったこの映画。確かに面白かった。 バンドブームが去るとともに落ちぶれていく一つのロックバンド。商業主義とやりたいことの間で、どんどん方向が見えなくなっていく。…