東京藝術大学創立120周年企画「岡倉天心―芸術教育の歩み」

これは面白かった!
茶の本」で有名な岡倉天心は、東京藝術大学の前身の創立に携わったことで有名で、芸大には初代校長である彼の立派な銅像がある。今回行ったのは、初代校長である岡倉天心と彼の理想、そして芸術教育の現場を見せた展示。
美術大学の創立に関わる書簡や歴史からはじまり、実に地味だなぁと思ってみていると俄然面白くなってくる。いかなる教科書が書かれたか、どういうカリキュラムを組んだか。どういう先生を呼んできたか。そして彼らがどのようなことを教えたか。開校当初の教科書やら制服やら、教授陣の作品やらがどどっと展示される。…手探りの中始まりながらも、これだけのものを集めてきて、一流の芸術教育をプロデュースした岡倉天心のパワーと発想力に驚嘆。
それだけでなく、実際の芸術教育の現場の展示も面白かった。見本となる彫刻があって、それを生徒がデッサンしていく。そのなかでよくできたものを保存して展示したりしている。将来名をなす人の作品はやはりどこか光って見える。また、卒業制作やその前の習作なども並べてあり、例えば横山大観の卒業制作が、その前の年に同じモチーフで書いた作品から大きくレベルアップしている様子などは素人目にもわかって実に興味深い。どんなに才能があっても、それを生かすような教育がやはりあったのだ。
天心は、生徒が作品のモチーフを決めるとき、「なんでお前はそれを作るのか」と生徒に問いかけたとのこと。歴史に材を取るものはしっかり本にあたって勉強し、動機を高めていくことの大切さを説いたという。芸術でも何かを創造する仕事でも、目的をはっきりさせて、勉強してから仕事に臨むことの大切さは変わらない。そういうところから教える芸術教育の精神は、今でも生きているのだろう。
さらには、美大で得られた成果や人材を社会に還元する方法についても彼は徹底して考えて実行に移していった。これもまたパワフルだ。銅像の製作をチームでうけおったり、美術展を開催したり。もちろん政府に教育の成果をアピールすることも忘れない。ここまでやってこそ、人材を送り出すという意味での教育機関のよさがより出てくるということを知っていたのだろう。
こういったもろもろをうまいこと並べてあるうえに、教授陣が集めた教材としての美術品や、教授陣や生徒の傑作が所狭しと並べられていれば、面白くならないわけがない。なにかを創造する仕事をするときの姿勢について、創造したものを社会に問うことについて…いろいろな意味でインスピレーションを強く受けた。
18日日曜まで。見てみたくなった人は急げ。