橋本治「橋本治という行き方 WHAT A WAY TO GO! (朝日文庫 は 27-1)」

この人も大好きな物書きの一人。全く偉そうでないところがまたいい。
もともと絵描きであった著者の文章は、いつもくねくねしている。心の持ちようがとても自由な人で、自分で考えたことに行き着く過程を含めて全て文章にしてしまうからだ。読者は、いつも彼のくねくねした、本人ですら「くたびれる」と言うような思考回路に付き合わされ、一緒に考えさせられることになる。
著者は自身を料理人に例えているところがあるが、料理人でいうなら、まさに即興でマグロをさばいて一品のオリジナル料理にしてしまう豪腕のコックのような人である。厨房にこもるなんてことはなく、汗かき腕を振るって格闘するその料理の様子はいつも丸見えなのだ。そしてそれが著者の文章を読む最大の魅力である。本書でも、作家論や批評論、自分に関しての話に至るまで、その本領がいやというほど発揮される。
ものを知っているとか計算ができるとか、そういうカテゴリーに収まらない頭の良さを著者の文章を読んでいるといつも思い知らされる。批評が全て個人攻撃のバッシングになってしまう傾向がますますエスカレートする今日に読むと、バッシングと批評に関する文章の先見性などは驚くほどだ。
いやはや、いつもながら楽しんで読ませてくれる。