2009-06-01から1ヶ月間の記事一覧

野家啓一「パラダイムとは何か クーンの科学史革命 (講談社学術文庫 1879)」

「ものの見方」「考え方の枠組み」という意味で一般的にもよく使われる「パラダイム」。この言葉はもともと、科学哲学・科学史において、『研究者の共同体にモデルとなる問題や解法を提供する一般的に認められた科学的業績(p15)』という限定した意味で用い…

三木義一「給与明細は謎だらけ (光文社新書)」

通勤、食事、住宅…健康的に仕事をするためにはたくさん必要なもの、お金がかかるものがある。こうした、一般の会社員に馴染みのある費用を手がかりにして、彼らに馴染みのない税金のかかる仕組みについて説明しようとする本。 そもそも、普通の会社に勤めて…

マルクス・アウレーリウス/神谷美恵子訳「自省録 (岩波文庫)」

ローマの皇帝が、日々の仕事の合間に書き残した言葉の数々。訳者である神谷美恵子の日記を読んだことがあって、ずっと気になっていたこの一冊を、じっくりと読んでみた。古典であり、立派な本と思って読んでみると、その言葉の正直なこと、著者の存在が身近…

太田朋子「分子進化のほぼ中立説―偶然と淘汰の進化モデル (ブルーバックス)」

ブルーバックスにもいろいろなレベルのものがあるものだ。全く手抜きなし、一般向けとしては難解としかいいようがないが、実に読み応えのある一冊。 分子というミクロなレベルでの遺伝子の変化は、その大部分が生物にとって有利でも不利でもなく、中立である…

八代嘉美「iPS細胞 世紀の発見が医療を変える (平凡社新書)」

再生医療に革命をもたらす「iPS細胞」が報告されてからずいぶん経つ。いまだにその何たるかも成立の過程も知らないのではあんまりなので、話題になったこの一般向けの入門書を読んでみた。 研究者見習いとも言える大学院生が書いたこの本、まったくもって見…

藤元宏和「細胞夜話 (mag2libro)」

ちょっとマニアックな本を一冊。 バイオ系企業の社員である著者のweb上のコラムを集めたもの。生物学で使われる道具とも言える「細胞」の名前の由来と開発秘話について、それを開発した研究者本人にメールで話を聞いたりしてまとめ、紹介している。 特に何と…

絲山秋子「沖で待つ (文春文庫)」

福岡の営業所で出会った同期の仲間との心の通じ合いを描く芥川賞受賞作。福岡で、恋人ではない男女の関係というモチーフは「逃亡くそたわけ」と似ている。男女がいれば恋愛という人間関係を意識してそこにだけスポットをあてるのではなく、ここに書かれてい…