山崎ナオコーラ「人のセックスを笑うな (河出文庫)」

題名と作家名があまりにもインパクトがあるので覚えていた文藝賞受賞デビュー作。
映画化するせいか、文庫になっており平積みにされているのを発見(なったのはそれなりに前のようだ)したので読んでみようかと買ってみる。
ちなみに、作者は女性で、主人公は男。解説でも書かれているように少し中性的な感覚を持つ主人公を描く。
恋愛小説はあまり好んで読まないが、これはなかなかよかった。恋愛の繊細な感覚が、自分に酔っている感じなく伝わってくる。「あ、だめかも」「あまり気がないな」などと、どこか冷静な部分を残して主人公が語る口調が気に入った。
また、全面的に出てくるわけではないが、主人公の感覚として、相手の性格とかとりとめのないものをどうこういうのではなく、顔や体や…という具体的なものや具体的なしぐさが好きなんだ、と考えるところも、「君の顔が好きだ」を思わせて、なかなか新しい。
ノンフィクションが多いなかで、ひさびさにこういうのを読むと、新鮮だ。