梨木香歩「村田エフェンディ滞土録 (角川文庫)」

舞台は100年前のトルコ。主人公の日本人留学生、村田の留学先での交流と学問の日々。
村田は「家守綺譚」の主人公の友人であり、時代的にも同じに設定してある。
さすがにこの人の小説は面白い。トーンとしては真面目なところで、塩梅のいいユーモアを交えて笑わせてくれる。
異文化交流と簡単に言ってしまいそうなものがどれだけ時間と互いの歩み寄りが必要なものか、をじっくり描いてくれているおかげで、仲間として互いに理解しあえた瞬間がとてもさわやかに心に伝わってくる。トルコの風景が浮かんでくる文章とともに、気持ちよく読める一冊。