村上春樹「東京奇譚集 (新潮文庫)」

「ひとまず読んでおこうか」というくらいの気持ちでも、名前で買わせてしまうのが村上春樹の力だろうか。
すうっと入れて、すうっと読める短編集。ちょっと不思議な話の世界にすんなり入り込ませてくれる会話がうまい。『やれやれ』というため息とか、『女の子とうまくやる三つの方法』など、お約束の会話もありながら、普通の会話がすごく自然でかけあいが面白い。
名前を隠して読んだら誰の小説だかわからなかったかもしれない。そのあたりに長編とは違う著者の顔がある。翻訳しても面白く読めるだろうな、という物語のうまさが凝縮されているというか。
もっと読みたいな、と思わせられるような、気持ちをほぐしてくれるお話が四つ。