絲山秋子「絲的メイソウ (講談社文庫)」

絲山さんの小説のファン(それほどたいそうなものではないが)なもので、文庫化された初のエッセイ集を発見してうれしかった。
特にこの方のことを良く知っていたり追っかけているわけではないが、ちょっと読んで「この人らしい」と思えてしまうところがさすがだ。誤解を招く表現で言うならば、実に男らしい。

笑えるところも多々あるのだけれども、読み終わって頭に残るのは、タバコとお酒を人生の友として、ストイックに小説を書いていく姿。編集者と家でああだこうだと言いあうのがいいのだ、というようなことを書いているのを読むと、嫌だ嫌だと書いたりしながらも、この人はほんとに書くのが好きなんだな、自分の頭の中で浮かんできたことを小説に焼き付けていくのが楽しいのだな、と思わざるをえない。
エッセイにも色々あるし、ほろりとさせたりくすりと笑えたりするもののほうが人気があるのだろうけれども、日常を書くのがエッセイならば、実際はそんなにそんなに楽しいこと、面白いことがある人ばかりではないだろう。逆に僕としては、こうしてぶつぶつ言いながら仕事をする姿にもまた共感してしまう。

あちこちで吐き散らされる毒もまたよい。毒は容赦なく読んでいる自分にも振りかかる。きっと自分は絲山さんに毒を吐かれるような人間だな、などと考えながら、自分をある意味笑いつつ読むのも楽しい。
全くもって文科系女の子であるように読める三浦しをんさんのエッセイとは全く対極に位置している、体育会系男の子的エッセイ。この二人の振れ具合はとても対照的なように見えて、面白い。