北村薫「街の灯 (文春文庫)」

街の灯 (文春文庫)
久々にミステリーを。
たいして本を読まなかった中高生時代に片っ端から読みこれは面白いと思ったのが、著者の「空飛ぶ馬」から始まる「円紫さんと私」シリーズ。ふと、新しいシリーズものが文庫で出ていると知って読んでみた。
戦前、昭和初期を舞台にしたミステリアスな雰囲気のなか、上流家庭の令嬢である主人公とその運転手が事件を解き明かしていく。
この本の解説に丁寧に書かれているようにこれまでの著者のシリーズものと異なる部分がありながらも、主人公とその尊敬する大人とのコンビという人物設定や主人公の一人称など、夢中になって読んだ「私」シリーズの記憶がよみがえってきて、楽しい時間を過ごせた。
北村薫さんの本で好きなのは、さまざまな知識欲をかきたててくれることである。本書でも、タイトルがそもそもが古い映画の名前(?)であるうえに、もちろん読んだことなどない(タイトルしか知らない)サッカレーの「虚栄の市」がついた短編からはじまって、本・音楽・映画に俳句と、ありとあらゆる知識がからみあって謎を構成している。楽しいことこのうえない。