菊池新「そのアトピー、専門医が治してみせましょう (文春文庫)」

皮膚科専門医、菊池先生の著書。文庫で手に入りやすくなったので、読んでみた。
ぼくのかかりつけの先生である菊池先生が、アトピーという皮膚病の理屈と対処法、自身が日ごろ行っている治療の考え方と問題意識、さらにはどういう医者にかかればいいか、という点まで事細かに語ってくれている。
皮膚病に悩まれている方にはぜひ手に取っていただきたい。少し難しいところもあるが、これは、そういう理屈や病気の根拠をごまかさずにきちんとわかってほしい、そのうえでアトピーに向かい合ってほしい、という著者の心意気のあらわれである。かんたんに治せると標榜するインチキほど、こういう難しさを隠そうとするものである。読む方も、きちんと読んで理解しようとする、根拠のない怪しげな業者とは決別しようとする覚悟が必要である。

この人が良いなと思うのは、決して、「こうすれば絶対なおります」とは言わないことだ。もちろん、日々恐ろしい数の患者さんを見ておられるからだいたい見ればわかるものも多いのだろうが、それでも、断言はしない。
患者の生活の様子などを聴きつつ、たぶんこうだと私は考えているから、こうしてみましょう、というやりかたで進めていく。なんというか、科学者・研究者としての、あれこれ考えて原因を捉えたうえで一歩ずつ先に進んでいく、というスタンスが奥にしっかり見える。そういうスタンスと、医者のカン、というものが両立することも、日常研究をしている身にはよくわかる。

そういう姿勢は好きだし、診察をしてもらうと、出す薬の根拠や診断の科学的裏付けをきちんと話してくれるので、ある程度知っているぼくなどは、混んでいるにも関わらず、けっこういろいろ話を聞きたくなってしまう。最近は薬をもらうだけだが、こういうお医者さんが真摯に日々活動なされていることは、それだけで嬉しいことである。