久保田崇「官僚に学ぶ仕事術 最小のインプットで最良のアウトプットを実現する霞が関流テクニック (マイコミ新書)」

キャリア官僚がその仕事術を公開、という実にスタンダードなコンセプトのビジネス書。仕事上のアウトプットをするために効率よくインプットする、といった内容は、こういう本を読み慣れた人には特に真新しさはないかもしれない。

しかしこの本は、そういう部分を補うだけの面白さと、納得できる部分があった。
そのうちの一つは、第一章に主として書かれている、「官僚とはどういう仕事をしているのか」という打ち明け話的な部分である。
官僚のお仕事といえば、法律を作っている、とか予算の折衝がある、とかそういう曖昧なイメージしかなかった。それが、この章を読むことで、政治との関係で、完了の仕事がクリアに見えてきた。すべての官僚がこの本の著者と同じような仕事をしているわけではないだろうが、国会の質問に対する答弁を考えるとか、新しい法案の内容を国会議員に説明するとか、国会と密接に関連した官僚の仕事の内容が非常に具体的に書かれていて、興味をそそられた。
そういう特殊な仕事の内容のなかで、どのような仕事術が必要とされるか、と語られるのは、一般論に偏りがちなビジネス書のなかではなかなか真新しい。しかもそれが、広告業界とかビジネス書を書きそうな人が多い業界ではなく、官僚の世界についてであるのがなおさらである。
将来的に官僚のお仕事に興味がある人、彼らと付き合いがある人などは、完了という人々の行動原理の一端がわかって、一読の価値があると思う。

もう一つ、スタンスとしてとてもいいと感じたのが、著者が、官僚という一番激務で、ワークライフバランスなどと言いそうにない業界のなかで、私生活とのバランスを取ってやっていこうと明言してそのための仕事の仕方を考えているところである。
もはや、どんな仕事をしている人でも、忙しくて余裕がなくなってきている状況は同じのようだ。そんななかで、自分の健康・持続的な仕事・将来の展開を考える時間を取るため、仕事に少々でも余裕を持たせられるか。このことを、それぞれの業界の、特に若い世代の人が考えて実践することは重要だろう。