ロンブ・カトー「わたしの外国語学習法 (ちくま学芸文庫)」

『5カ国語の同時通訳者、10カ国語の通訳者、16カ国語の翻訳者』であるという著者による、全ての言語に通用する独自の外国語学習法がここに明かされる。訳は、ロシア語の達人、米原万里である。

これまで英語学習法というものをいくつか見てきたが、この本でも書かれており、確実に重要だと思われるのは、以下のことである。自分のやる気を高める意味でも、まず、下に書いてみる。

誠実な人々は、ものごとを簡単に一般化しないものです。しかし、統計的数字に基づいた確かな結論が、ここにあります。すなわち、外国語学習に必要な最低限の時間は、週平均10〜12時間なのです。(p068)

確かに、「最低限」だ。このくらいを捻出できないようでは、上達は望めないだろう。本気で上達したいなら、平日に1日1時間、土日に2時間ずつ、くらいはどうにかせねば。

さて、そのうえで、この本では、勉強に専念できる子どもではなく、毎日の仕事を抱えながら勉強する必要がある大人が、どのように効率的に外国語を習得していくかについてたくさんのアドバイスをくれている。
この本でも書かれているとおり、頭の中に、それまで生きてきて培われた言語と論理の体系がすでにできている大人の外国語学習法は、自然、子どものそれとは異ならざるをえないだろう。
「専門的知識を使え」と著者は言う。高校までに勉強してきた文法をベースに専門的知識について学習していけば、英語やその語彙の使い方の法則のようなものが自覚されてくるだろう。つまり、子どものように感覚ごと外国語に浸るのではなくて、自分の知っている母国語とのズレを楽しんでいくのが大人の外国語学習なのかもしれない。
そこが外国語を使う環境でなくても、本を読み、独り言を言う(この二つは著者が強く薦める学習法の2つである)、ラジオを聞く、などすることで、自分で外国語のパターンを習得できるような環境を作り出していける。この本では、本の読み方、ラジオの聴き方、外国語教師の利用のしかたなど、こと細やかにアドバイスをくれており、ありがたい。ネットを使えるようになった今の時代ならばなおさら、この本で薦めてくれていることよりもっと効率的なやり方で学んでいくことができるだろう。

最後に、著者の示してくれた10のアドバイス(p211-)のうち、個人的に最も気に留めておきたい一つを下に引用しておく。

VIII 外国語は、四方八方から同時に襲撃すべき砦であること。新聞をよむことによって、ラジオを聞くことによって、吹き替えなしの映画を見、外国語での講義を聞きに行き、教科書を学習し、その外国語を母国語とする人たちと文通したり、出会って会話することによって。(p212-213)

途中に挟まれる、言語に関する小話などもたいへん面白く、堅苦しくなく読ませてくれる。読んだからには、ぜひ実践しようと思い、少しずつはじめているところだ。