内田和俊「ちょっとした言葉グセを直すだけで、あなたの人生は変えられる!」

内田和俊さま、この場を借りて献本御礼申し上げます。このような、匿名・無名の1ブロガーにまで、嬉しいことです。

言葉をポジティブなものに変えれば、気持ちにもポジティブな影響が及ぶ。自分の言葉グセに注意しネガティブな言葉をやめていくことで、ネガティブな循環を断ち切り、行動もいい方向に向けていくことができる。
松井秀喜の好きな言葉だったか、心を変えれば行動が変わり、行動が変われば習慣が変わり…という言葉があった。この本は、その「心」つまりは「感情」こそが一番コントロールしにくく、外部要因で翻弄されやすいものであり、感情を良い方向に持って行こうとするポジティブシンキングの前に、ポジティブトーキングこそがあるべきではとの考えに立っている。

これは非常に納得がいく考えであり、多くの社会的成功者が、同じようなことを程度こそ違え考えて実行しているということはなんとなく確信できる。

つまり、わかっている人には、この考え自体はどうってことはない。この本の良さは、著者の前著と同様に、そのアドバイスが、親切かつ、具体的で実際的なところにある。
どういう言葉がどういう理由で他人に悪く取られてしまい、耳障りになりうるのか、どういう言葉がどのように自分や他人にポジティブな影響を及ぼしうるのか。こうした具体的な言葉とその効果の数々が、スポーツ選手や芸能人の言葉、「あるある」と言いたくなる身の回りの人の口癖や会話から、読者にわかりやすく提示される。
人生のあるステージで、どうしても悪い方悪い方に転がってしまうことがある。そういうとき、この本を読みながら自分の言葉遣いなどについてチェックしてみると、打開できる道が見つかるかもしれない。そう思わせてくれる「ポジティブトーキング」のエッセンスが、ここにある。

もう一つ、この本を読んで、個人的に大事だと改めて確信したことについて書きたい。それは、この本の最終盤で出てくる、言葉で人を幸せに・強くすることの重要性だ。
この本に書いてある、ポジティブな言葉を使うことで自分の人生を好転させる、という点については、上にも書いたが、できる人は当たり前にできる。ただ、自分を幸せにすることで終わらせてはいけない。
独り言だったり、ごく親しい仲間・家族のレベルではポジティブだが、少し縁遠い他人と一緒だと、自分をひたすら卑下したり、仕事が大変で、などとネガティブな言葉が多く出る人がいる。ポジティブな言葉が、少し広い世界に対しては出てこない人がいる。僕のいる、大学というところに特有の人種なのかもしれないが、自分の幸せを考えるとき、そこまでポジティブにするのは面倒だし必要ない、と思うのかもしれない。
ただ、上に立っていこうとする人間には、なるべく身の回りの人や、後進の若い人に、ポジティブな感情を広めていく義務があるとおもう。確かに人生や仕事は大変かもしれないし、成功するかは個人のやる気と能力にかかっているのは確かだが、その業界全体を盛り上げていこうとする、少し広い場面で、より多くの、そのある部分はあまり自分と関係のないかもしれない人間に対して、ポジティブな言葉遣いをしていくことが、これから少しずつ多くの人に求められていくはずだ。
そんな、自分自身だけでなく身の回りの人間の良さを引き出すように言葉をつかっていこう、というメッセージが最後にある。この本の個人的に一番好きなところでもある一方で、この本を自己啓発本として読む人にはなかなか理解しがたい部分かもしれない。しかしそういう、フォーカスの広さ・深みが、この本の見逃せない部分であるのは確かだ。