「マイ・バック・ページ」

キネマ旬報 2011年 6/1号 [雑誌]
ブラック・スワン」も見たし、とても面白かったのだけど、なぜか書いて残しておきたいのは、今日見た「マイ・バック・ページ」。妻夫木聡松山ケンイチがその役者としての真価をこれ以上なく発揮していて引き込まれた。2時間超があっという間だった。
天然コケッコー」「リンダリンダリンダ」の山下敦弘監督が、左翼運動の激しかった70年代のある事件を題材に撮った作品。
すかっとするとか、単純に面白いとか、そういう誰にでも薦められる作品ではない。題材の好き嫌いもあるかと思う。今から見れば、なんと愚かな、と感じるかもしれない。しかしこの映画はそういうところに留まらない、時代を超えた若者と社会の関係に迫っている。きっと、見る年齢によって、思うところは違うだろうし、それが面白い。

この映画は、少なくとも今のぼくの心にはずんと弾丸を撃ち込まれたように響いた。この映画で「大人」「社会」として描かれる立場をわかった気になっている、妻夫木くん演じる主人公を甘いなぁ、と見てしまっている自分。一方で、主人公の持っているような理想とか若さみたいなものも無くしていないと自負している自分。でも、ほんとうか?そういう要領の良さみたいなのは、何かを犠牲にして得られたものではないのか?
この映画の一つのキモになっている「ちゃんと泣ける男がかっこいい」というセリフ。そういえば、最近ちゃんと泣けなくなっているような気がする。それを素直に認められたのははじめてかもしれない。
マイ・バック・ページ」…自分がここに至るまでの過去の恥ずべきできごとだとか、見たくないこと。それらをちゃんと受け止めた上で、これからいろいろな挫折にぶつかっていくかもしれない後輩やより若い世代に対して、素直に接することができる自分でありたい。

ラストシーンが、ほんとうによかった。一人で見てよかった。