伊坂幸太郎「死神の精度 (文春文庫)」

死神の精度 (文春文庫)いまさらながら、はじめて伊坂幸太郎に手を伸ばす。
人間の死を決める仕事をしている死神が、さまざまな人間と出会い、その死までを見守っていく。短編を統べるこの大きな筋立てからしてうまいが、音楽が好きで渋滞が嫌いな死神のクールなキャラクター作りといい、話を構成する要素が面白くて読ませる。
死神がしばらくの時間を一緒に過ごすのは、老若男女さまざまな人たち。設定上、主人公が実は死神であることも、自分が死ぬだろうこともわからないながらも、どこか一人ひとり、死ぬべきことを覚悟しているような、日々ただ懸命に生きる人間の姿。それを見ている死神の口調はクールそのものだが、そのなかに、書いている人の人間へのいじらしさというか、愛情のようなものがにじむ。
おどろおどろしい設定だが、読後感はとてもいい。