塩野七海「コンスタンティノープルの陥落 (新潮文庫)」

イスタンブールへの出張を期に、この有名な作品を読んでみることにした。
イスラム教のモスクが建ち並ぶイスタンブールも、かつてはキリスト教を奉じる東ローマ帝国の首都であり、ギリシア色の濃い街だった。当時鉄壁を誇ったその都がいかにして孤立していき、トルコ軍により陥落させられたか、をトルコのスルタンの立場、東ローマ帝国の皇帝とその周辺、そして街に深く関わっていたベェネチア人、ジェノヴァ人のそれぞれの立場から描く。
この1453年の出来事について数多く残された記録を構成し、実に面白く読ませてくれるところはさすがで、引き込まれて一気に読める。
これを読んではじめて、「ロシア正教」「ギリシア正教」と呼ばれるものがある経緯と、そこにこめられたものが少し垣間見えた気がする。陥落のできごとだけでなく、そこに至る東西両ローマ帝国と教会についての歴史も書かれているのはとても親切で物語に入っていくのによかった。街のかたちのみならず、宗教や国のなりたちも歴史なくしては語れないのだなということがいまさらながら感じられた。面白かった。