浅野和生「イスタンブールの大聖堂―モザイク画が語るビザンティン帝国 (中公新書)」

東ローマ帝国の首都としてコンスタンティノープルと呼ばれ、オスマントルコによって陥落したのちにイスラムの都市となったイスタンブール。その都市の変遷を1500年近くにわたって見守り続けているのが、聖ソフィア大聖堂だそうだ。
だいたい、もともとキリスト教の大聖堂だったものが、あとからイスラムのモスクとして用いられたという歴史からしてそそられるものがある。オスマントルコがこの都市を手中に収めたとき、この建物を大事に壊さずにモスクに転用したのは、まさにこの大聖堂のすばらしさによるものだったのだろう。それどころか、キリスト教時代のモザイク画も、モスクにする際に壊したり撤去したりするのではなく、漆喰で塗りつぶすだけだったおかげで、現在いくつかはその作られたときの姿を目にすることができるそうだ。
この本では、大聖堂の歴史とともに、モザイク画に関するミステリーの謎ときにも挑んでおり、この大聖堂がいかに人々をひきつけてやまないかがよく分かる。