「ちりとてちん 完全版 DVD-BOX II 割れ鍋にドジ蓋」

一枚目→「ちりとてちん 完全版 DVD-BOX I 苦あれば落語あり(4枚組)」 - 千早振る日々に引き続き。

それにしても、これほど見るものを引きつける力があるドラマはそうない。
主人公が落語家として修行をはじめ、結婚を経て成長していく第二巻。
その前半の中心として、三角関係という男女のよくある話を描きながらも、それにこんなに感動させられてしまうのはなぜだろう。ナレーションに余計なものがないかわりに、主人公の表情や周囲の彼女を支える人々の気持ちが、細かい説明をするようなセリフがなくともとてもよく伝わってくる。
どうしてもネガティブになってしまう主人公、そして、主人公が恋心を抱く、落語に真摯に向き合ううえに周囲の人間を傷つけてしまう兄弟子をはじめとして、一人一人にそれぞれの少し困った事情がある。でありながら、彼らがそれぞれに他人とぶつかりあいながらわかりあっていく様子が、見ているものに寄り添うように段階的で実に無理がない。特に、このドラマを見た人はみんな共感してくれると勝手に思うが、主人公の母を演じる和久井映見がすごい。元気でうざったくも思いやりあふれる母を演じていて、特に感動させようとしているわけでもないのに、彼女の心配そうな顔を見ているだけでもうるうるしてしまうのだ。
母と子、男と女、師匠と弟子、先輩と後輩、ライバル同士…生きていれば、数限りない軋轢と面倒の種である人間関係が存在する。他人との関係だけでなくて、自分が嫌になってしょうがないとき、自分ときちんと折り合えないときもある。それを否定せず、それとしっかり向き合って分かり合おうとすればこそ、ふと他人の自分を思う気持ちがわかる瞬間や、相手と気持ちが通じ合う瞬間に感動することがあるのだろうし、人生が実りあるものになる。そんなことをさまざまなエピソードから思い出させてくれるのが、心にじんわり効いてくる。
このドラマでもそうなのだけれど、自分の仕事上の成長にしても、他人との関係にしても、満足のいくところまでに変えていくには時間がかかる。その、「なにごとも時間がかかるのだ」ということは案外忘れがちだけど、ほんとにそうなんだよな、と最近ことに思い知らされるし、また自分に言い聞かせているのである。
最終巻が楽しみだ。