吉村仁「17年と13年だけ大発生?素数ゼミの秘密に迫る! (サイエンス・アイ新書 72)」

ご存知のとおり、セミは生まれてから幼虫の数年間を地中で過ごし、地上に出てきて短い人生を全うする。普通は毎年同じセミを我々は地上で見ることができる。しかし、アメリカには17年、13年という一見奇妙な周期で、ある年にのみ大発生するセミがいるとのこと。著者は、この「素数ゼミ」がなぜそのようなある年に限って大発生するのか、そうした周期を持つようになったのはなぜか、について解き明かしていく。
この本自体は前から知っていたし、そういうことをやっている人がいることも知っていたが、今まで読めずにいた。読んでみて思ったのは、なによりまず、セミの大発生の写真のインパクトがすごい。昆虫があまり得意でない人は直視できないような、目をひきつけずにはいないような写真が載っている。
文章に若干読みにくいところがあったり、誤字脱字があったりするものの、科学的に謎を解き明かしていくストーリー性はさすがに面白い。仮説を立てて、それを検証していく過程は進化を研究することの醍醐味を教えてくれる。なぜ日本には素数ゼミのようなセミがいないのか、地理的に限定された地域にのみ発生するのはなぜか、といった点にも、氷河期というキーワードで一通り説明することに成功している。過去に起こったことの検証は難しいものの、ここまで一通りのことにそれなりに納得のいく結論をつけたことはすごいの一言。
遺伝の法則やそれを適用するあたりはさすがにもう少し解説があったほうが初めての人にはいいのではとも思ったが、おおむね解説が親切で、伏線というか話の基礎もしっかり書かれていて面白く読める。推理小説を読むつもりで、こういう本もいかがだろうか。