2008-01-01から1年間の記事一覧
けっこう、本はしっかり立ち読みしてから買うほうだ。しかし例外もあって、落語のことを題材にした、もしくは書いた本、そして向田邦子のことを書いた本に目がない。これもあまり中身を読まずに思わず買ってしまったうちの一冊。 使ったことば、描いた食事、…
「事実をありのままに切り取る」と我々が思っている写真。しかし、写真の成立が人類の歴史上それほど昔のことでなかったのと同じく、そうした考え方自体も実は、近年(約半世紀前)にはじめて現われたものだった。 テレビ番組などの視聴にあたって「メディア…
DVDを知人から借りたものを土日で一気に見たが、これはすごい。DVDの売れ行きが良いらしいのもわかる。 若狭の塗り箸職人の娘が、大阪に出て上方落語を志す、というお話。 主人公が小さい頃に、おじいさんの工房でかかっている落語のテープを聞くのが彼女が…
芥川賞・直木賞という賞の名前くらいは誰でも知っている。そのなかでも、芥川龍之介の名前と彼の書いた小説を知らない人はいないだろう。 しかし、直木さんって、どんな人?…というのが普通の人の反応だろうし、僕もこの本を読むまで「菊池寛と仲が良かった…
明治から昭和にかけて、世界を飛び回ったのち、和歌山の森で生物学や民俗学について深く独自の思索を繰り広げた南方熊楠。彼の生きた19世紀末から20世紀初頭の学問の潮流を解説しつつ、彼の学問の先端性を示す。人との接触が少なかった彼だからこそ見通せた…
名前とその偉業くらいは知っている、シャンポリオンによるロゼッタストーン解読。サイモン・シンの「暗号解読―ロゼッタストーンから量子暗号まで」にも描かれていた有名な仕事だ。しかし、この本を読むまでは、彼がどのような人物で、どのような背景のもとそ…
運慶、千利休、世阿弥、光悦など、日本史における芸術家たちの人物像を、その作品と資料から著者が再構成して短編小説として提示する試み。 どの人物にも、芸術で生活が成り立つのかという恐れ、一方でひとたび頂点を極めればいつかは落ちるかもしれないとい…
かなり近い時期にまるで同じようなタイトルの新書が出るのは、流行のトピックでもない限りなかなか珍しいように思った。 伊藤章治「ジャガイモの世界史―歴史を動かした「貧者のパン」 (中公新書)」 - 千早振る日々 しかし、かなり毛色が違っていて、上の本と…
クモの糸について研究してきた著者が、クモの生態とクモの糸の面白い性質を紹介するとともに、クモの糸にぶらさがるという夢を実現するまでの試みと苦労話を語る。 芥川龍之介以来の(?)悲願であったこの実験は、もともとテレビの企画で始まったものである…
英文学を楽しく我々に紹介してくれる柴田先生の、翻訳の講義の様子を文字に起こした本。しばらく前に買ったものを、じっくりと楽しんだ。 表題では、「翻訳」は『Literary Translation』となっている。柴田先生だから当たり前だが、あくまで「英文学の」翻訳…
映画化された印象や帯などから、いかにも恋愛小説、という感じではないかと思っていたが、さすがに山田詠美。もちろん人間関係の一つの形として恋愛を大きく取り上げてはいるものの、単に恋愛というにとどまらない人間関係の機微を描いており、性別や年齢を…
著者の名前は良く知っている。でありながら、自分の年齢からくるものかもしれないが、なかなかこれまでの、そして現在の活躍をあまり存じ上げないのである。 それでも、この本は面白い。70歳になって、タイトル通りの「隠居宣言」をした著者の思うところ、こ…
単行本が出ているときに「これ読みたいな」と思った本は必ず思い出す。もはや特技と言ってもいいくらいだ。この本も、文庫新刊で平積みになっているのを見て、ああこれそういえば、と購入。おもしろかった。タイトルが落語にちなんだものである時点で面白く…
いまさらながら、初めてのTOEICに向けて勉強中。特に何か必要なわけでもないが、一度だけ受けてみたかったので、少し集中してやってみることに。あくまで趣味といってもいいので、だらだらやるものでもないし。 まず気軽に取り組める文庫本タイプのこちらで…
面白い。ホームレス支援活動で有名な著者が書いたはじめての新書は、実に中身が濃い一冊となっている。タイトルが示す通り、貧困と戦う著者の思想と実践を書いたものだが、なんというか、うまいのである。 先に書いてしまうと、これを書いている僕自身は、こ…
会社は誰のものだろう?株主のもの、というのはよく言われるし分かるが、短期的にしか関わらない多数の「株主様」にばかり目を向けながら、会社の長期的な成長はなしえるものだろうか?こういった問題に対する解決策を、タイトルにある「部長」を中心とした…
同じ著者の「最後の息子」の主人公のその後を綴った短編集。…ということは読み終わってから裏表紙を見て初めて知った。 「最後の息子」に比べてずいぶんとトーンが暗く、続いた話になっているのだということに気づかなかった。それだけではなく、この本の連…
ナチスによるユダヤ人大虐殺についての本は何かと見る。しかし、その一歩手前、第一次大戦後のワイマール共和国の時代に数多くのユダヤ人が活躍したことは知らなかった。文化、芸術、科学、政治などの幅広い分野で、カフカ、フロイト、アインシュタインなど…
あえて本のメモの間に挟むべきかどうかちょっと迷ったけれども、久しぶりに自分でCDを借りてきて聞いたので、書いておく。そう。ベタですが、好きなんです。 しかし、なぜか、あんがい「なにがいいのかわからない」と言う身近な人が多いので、CDが出たらちゃ…
前著『理系のための研究生活ガイド』がなかなか面白かったので、新刊を読んでみた。 研究生活に入る前の学生や、入ったばかりの院生ならともかく、こういう本をいまさら読んでもためにならないのではないか、と自分でも思ったが、アクティブに活動する研究者…
精密なモーターの生産を手がける日本電産の社長の永守さんは、テレビなどでも名経営者として良く取り上げられている。その経営の真髄にさまざまな角度から迫るドキュメント。単行本で出ているのは見たことがあって、文庫で出ているのを見て即購入。 スケート…
タイトル通り、英文の書き方についての本。特に「文と文のつなぎ方」に焦点をあてて、意図を正しく伝えられる英文を書くポイントを客観的で形式的な指針で示そうとする面白い試み。 この本は、あくまで「文と文のつなぎかた」に話したいことを絞っている。そ…
プログラマーに比べ、バイオ研究者に飛び抜けた才能が現れない理由のひとつ - ミームの死骸を待ちながら 科学者は、プログラマーほどいろいろ手軽に面白そうなこと、やってみたいことを試せないのではないか?もっと、誰もが自由に「生命をハックできる」よ…
ありきたりだが、惜しい人をなくしたものである。 タイトルどおり、河合先生が友情について綴った文章を集めたこの小さな文庫。 友情を支えるものは何だろう、信じられなくなったときにどうすればいいだろう、亀裂が入るのはどういうときで、どういう心持ち…
一度は立ち読みで終わらせたつもりだったのに、やはり少しお金に対する意識をもっていたほうがいいか、と思い買ってしまった。 前半で、投資家はリスクを計量してリターンを得ていこうとするのだ、リスクを計量できるのが金融がギャンブルと違うところだ、と…
芥川賞作家のデビュー作。新宿二丁目のバーのママと同棲する気ままな男の生活を描く表題作を含めた3作。どれも出身地である長崎の色が良く出ていて、新鮮だった。 男の子の生態とでもいおうか、そういうものがとてもリアルに書かれているように思った。まっ…
死してなお、その原作のドラマ化が絶えない松本清張。その担当編集者をやっていた著者が綴る、権力を嫌った孤高の大作家のルーツ。 彼の作品はまったく読んだことがないのだが、この本はその魅力を押し付けがましくなく、しかし存分に伝えてくれた。 さまざ…
これまで、英語自体を目的として勉強してきたことがほとんどない。そのため、TOEICも受けたことがない。 この人の前の本は二冊ほど目に入ったときに買って、やってみたが、ふーんそんなもんかとそのときはそれで終わっていた。 しかし、今年は海外学会に行く…
『あやつられ文楽鑑賞』刊行記念のイベント(http://d.hatena.ne.jp/PineTree/20070730/p1)ではじめて目にした著者の、着物で、落ち着いて清楚な雰囲気を思い出しながら読むと、このエッセイのあまりのくだけぶりがとても面白かった。 本を愛し、あれこれ好…
「かもめ食堂」と同じ監督さんの昨年公開の作品。同じように、レンタルで鑑賞。 小林聡美ともたいまさこがでてくるところは前作と同じだが、二人の立ち位置は前回と反対のように見えた。「かもめ食堂」では、小林聡美がどちらかといえば「主人」としてどっし…