岡崎京子「チワワちゃん (単行本コミックス)」

最近映画で話題をさらった岡崎京子の本のうち、何冊か有名なもので家になかったのを読んでみることに。まずはこれ。
どれも、女の子たちの刹那的な生き方と、満たされない毎日と、そんな彼女らにとっての幸せとは、といったことがクスッと笑わされるウィットとともに描かれていて、なんともいえない余韻を残す。
特に、「友だちと別れたことのある人に」と前置きのある表題作「チワワちゃん」が軽いトーンながらも考えさせられるところが重い。バラバラ殺人で殺されてしまった「チワワちゃん」を知る人々が、それぞれ彼女のいろいろな側面を語っていく映画のようなこの短編。
マンガなのだから重さとかなどいらない、というのもわかるが、この時代で自分として生きるってなんなんだ、だれも他人のことをちゃんとはわからないのに、自分が生きる意味ってなんなんだ、みたいな問いをさらっと投げかけてくる作品はやはり魅力がある。
24歳のときに亡くなった、明るい女友達のことを思い出した。結局、彼女の寂しさとかやりたかったこととか心の奥のことだって、ぼくらは誰もわかってなかったのだ。でも、そんなもんだ。そして、ちょっとやり過ぎかなと思っても、毎年彼女の不在を悼むことはやはりぼくらが生きていくには必要で。

「人はいろんなことがコワくて、それをコワくなくなるように、私はこれを描いた」とあとがきに書いた岡崎京子。彼女の心のなかにある、たくさんの問いとか闇とかが、彼女の作品を時代を超えて残るものにしているのかもしれない。