駒崎弘樹「働き方革命―あなたが今日から日本を変える方法 (ちくま新書)」

『常に忙しいことに、僕は誇りを感じていた。(p34)』というベンチャー企業の経営者が、ふとしたきっかけから、自分の働き方のスタイルの変革を試みる。いろいろな試みにより職場での仕事の効率化をはかり、たどり着いたのは、家族のこと、自分の身体のメンテナンス、私生活も含めて働くということだ、という「拡張された仕事観」だった。
勢いがある本である。ベンチャー企業の経営者ならではの、少し押し付けがましいところがあるが、それも含めて読ませる。自分で自分のやっていることを「イタい」と言える客観性がこの本を面白くしている。

だいたい、ワークライフバランスとは言えば言えるが、著者は、ここまで徹底してできるのはなかなかないぞ、というくらいあらゆる試みで職場の仕事のしかたを変えていく。ポイントを抑えた会議にするためのルールを決め、集中する時間をつくり、在宅勤務をやってみて…。ありとあらゆるところに、仕事の非効率性は潜んでいる。多くの職場の多くの仕事は、かなりの部分が非効率で、それだけで給料がもらえる、実に非生産的なことをやっている。僕はまだまだ社会を語るには若いが、出入りの業者、関連企業、職員、全て含めて見て、どうにもそうとしか思えないところが多い。だから敢えてそういってしまおう。
そういうことを変えるには、ポイントを抑える頭の良さはもちろんとして、決断力が大事だ。あんたのやっていることは無駄だ、というのは勇気がいる。みんな、それが言えなくてそのままやり続けていることはかなり多いと思う。

もちろん、こういった業務改善ができるのは著者が社長だからだ。それは間違いないが、そんなことできないよ、と読んで言ってしまっては著者がここまで自分をさらして本を書いた甲斐がないというものだろう。
どんなに自分の立場が低くても、一緒に働いている人がいて、上司だけでなく部下も同僚もいたりするだろう。自分の考えを少しずつわかってもらい、いっぺんには無理かもしれないが、仕事のあり方を少しずつ効率的にしていき、私生活も充実させていく。これは、ある程度仕事の腕も必要だが、ひとりひとり、誰でも実行できることだ。時間もかかるかもしれないが、著者がそうであったように、「仕事のあり方を変えてやる」と強く思うのに、早いに越したことはない。

日本を変えよう、という著者のメッセージは大仰に聞こえるかもしれない。しかし僕はこういうのが好きである。革命は、ごくごく小さいところからしか起こりえない。そもそも、将来的には広い範囲を変えてやる、というそういう気持ちでないと、わざわざ他人の仕事のやりかたにまで口を突っ込んで、面倒くさい軋轢を起こすことなどないのである。