島地勝彦「甘い生活 男はいくつになってもロマンティックで愚か者」

ウェブ上の連載「乗り移り人生相談」で著者のことを知って興味を持った。
週刊プレイボーイなどの編集者を務め、昭和の文豪たちと渡り合って面白い企画を次々と立ち上げた著者の、自由で大人な仕事と生活っぷりを書いたエッセイ。

開高健*1ドーバー海峡を泳がせ、柴田錬三郎に『少年眠狂四郎』を書かせる…どちらも幻に終わったそうであるが、あちこちに見られる著者のアイディアマンぶりには唸らされる。この本では美食の話、お酒の話、ゴルフの話も良く出てくるが、これらとともに、仕事自体が著者にとっての『楽しい暇つぶし』の一つだったのだろう。

かっこいい大人は、仕事と遊びを、どちらも同じように、誰よりも楽しそうにやる人間だ!…そう確信させてくれる。

もう一つこの本、というか著者の書くものが面白くて好きだなと思うのは、面白かった本をたくさん紹介してくれることだ。編集者だからといって楽しい本を知っている人ばかりではなかろう。ノンフィクションから古典まで、これは読んでおきたまえ面白いぞ、と優しくアドバイスしてくれる感じがたまらない。しかもまた、紹介される本はどれも本人が読んでとても面白かった、一癖あるものばかりである。そういう読書ガイドとしても、いいエッセイだ。

そういう人生の楽しみ方とともに、人生の滋味というのか、難しさ切なさというのか、そういうふと考え込んでしまうような話も挟まれるところがまたよい。ただ能天気に上を向いてきた成功者、というだけではない深さのようなものが、このエッセイに読み応えを与えている。おすすめ。

*1:昨年読んだ「夏の闇」はこの本を読んで面白そうだと思ったのである