田島弓子「プレイングマネジャーの教科書―結果を出すためのビジネス・コミュニケーション58の具体策」

先日、リーダーシップについての素晴らしい本を読んだ(→増田弥生・金井壽宏「リーダーは自然体 無理せず、飾らず、ありのまま (光文社新書)」 - 千早振る日々)。この本で対象にする「プレイングマネジャー」とは、まさにそういうリーダーシップを期待される立場である。
さらに、プレイングマネジャーが、自分でも結果を出さねばならず、かつ部下も育てねばならない立場だとすれば、気にせねばならない上司がいて、部下もいるという状況は、仕事をする多くの大人にとって、とても一般的な状況である。
この本は、そんなプレイングマネジャーが、いかに上下左右に気を遣って仕事を遂行していくか、そのヒントをくれる一冊である。

私が改めて言うまでもなく、仕事というのは「思いどおりにいかない現実との、刷り合わせの連続」。つまり時には正しいことも、相手の状況を慮りながら、変化球で伝えなければいけないケースというのは、利害関係が複雑な仕事の現場においては、ままあることです。(p173)

書かれてみるとこんなあたりまえのことが、あんがいできない(あるいは、必要性を感じない)人がいるから、仕事は難しい。


クレームのつけかた、部下の叱りかた、締め切りの設けかたとリマインドのしかた、上司へのお伺いのたてかた。さらには付き合いの難しい相手との向かい合いかたまで、仕事をするうえでは、さまざまな「気の遣いかた」がある。

この本がすごいのは、そういうことをしっかりと、かつわかりやすく言語化してくれていることだ。ぼくが日常的にうんうん頭をひねって考えているような、気を遣いかつ効果的なメールの書きかたや、話しかたなどを、惜しげもなく、わかりやすく披露してくれている。
特に、部下をもつものにとって、話しかけられやすい雰囲気作りがとても大事だとの指摘の重要性は、どれだけいろいろな本に書かれても書かれ過ぎということはないだろう。あいさつをすること。給湯ポットや冷蔵庫の前で話すこと。そういうちっちゃいコミュニケーションが大事だということには、全力で同意したい。


部下として上司に対するコミュニケーション、他部署との対応などにも触れており、扱う内容は広い。「上司に叱られたら謝りなおしにいく」「第一声は「すいません」にする」「上司の気まぐれそうな指示は何日か寝かせる」など、実際にやっているものを「これはいいですよ」と書かれるとなんだか気恥ずかしい。しかし、効果的に仕事をまわそうとすると、違う業種でも、違う職場でも、たぶん同じような気遣いのしかたに行き着く。そこにやりすぎとかはないのだ。きっとそんなところなのだろう。

自分の職場におけるありかた、気の遣いかたなどについて再確認するのにいい。個人的には、「部下との相談の時間もスケジューリングする」ということがきっちり書かれているのには背筋が伸びる気持ちだった。コミュニケーションも、仕事のうちなのである。