鈴木紀慶「建築家―中村好文―と建てた「小さな家」」

最近、都会に住まうこと、住む場所をどう作るか、について考えている。
こちらの本にもあるように、中古を買ってリノベーションする、という選択肢が増えているのもおもしろいなと思う。どうも、いろいろ読んだり見たりすると、がっちりローンを組んで新築マンションを買う気にはとてもなれない。
この本は、いろいろな物件を仕事として見てきた著者が、知り合いの建築家に頼んで小さな二世帯住宅を建てた顛末を語ったもの。狭い土地に、玄関一つで作った二世帯住宅。工夫に満ちた家の写真を見ているだけで嬉しくなってくる。
特に、一つの玄関で親と同居するにあたって、半パブリックな領域である土間をうまく生かしているあたりがいいアイディアだ。光の射す場所を中庭にして、部屋同士が広く見える工夫など、住んでいる家族間の適度な距離感を生み出すように作られた家の様子が読んでいてもよくわかる。
賃貸派だった著者が家を建てようと思ったきっかけ、土地の選び方、資金調達のしかた、どういうところにこだわったか、などについても詳細に書かれていて、とても参考になる。
家を建てる(買う)のも、人生における決断にしても、安直に決めてしまうのではなく、信頼できる人と、思いをつき合わせて決めていきたいものだ。