吉原欽一「アメリカ人の政治 (PHP新書)」

おもしろかった。

建国から、オバマ大統領誕生前までのアメリカの政治の変遷を、そこに深く関わってきた人々や争点となった問題を含めて追っていく。

最近、仲正昌樹さんの「集中講義!アメリカ現代思想」という本を読んだことや、「ハーバード白熱教室」のせいもあってか、さまざまな利害が絡む中で一つの国を成り立たせているアメリカのありかたというものに興味がある。先日読んだ本の感想には、こう書いた。

個人の自由と、集団の平等のバランスをどうとるか。そういう議論をどのようにしていき、どう合意に至ればいいのか。

このことを、哲学的に、でなく実際の政治の場でアメリカという国が追い求めてきた過程が、この本では垣間見える。

合衆国建国後の意見の相違と国家の危機の話は初めて知って、大変興味深かった。その際に、意見の違う政党の存在を認め、政権交代のたびに政治の方向が変わりながらも、国の骨格は変わらないというやりかたを実践とともに作り上げてきたアメリカの政治家たち。簡単なことではないよなぁとつくづく思う。

そんなアメリカにも、利権の構造はある。ただそれが、二大政党制にも見られるように、固定されたものではなく動的である点、さらには、複数の主張や利権が少しずつ重なり合っているようなところが違う。
銃規制や中絶容認、税金についてまで、一つずつの小さな政治的問題にフォーカスした政治団体があり、それらがどのように活動しているか。民主党共和党が、どのようにそうした小さな団体をまとめて、資金を集め、支持を広げていっているのか。アメリカの政治のダイナミックさが、よくわかった。

言いたいことがあれば自分動く。みんなで決める。ダメなら変える。原理はシンプルながら、それを成り立たせている多様性と複雑さは実にすごい。