久生十蘭「湖畔・ハムレット 久生十蘭作品集 (講談社文芸文庫)」

往来堂にて購入。同じ著者の本が何冊も並んで平積みになっているのを見て、なぜか引きつけられるものを感じて買ってしまった。

しかしこれはすごい人を見つけてしまった。というか、教えてもらった。こういう、とても自分からリンクしていかなそうなところに無理矢理つながることがあるのが、本屋の存在価値といってもよい。

久生十蘭(ひさおじゅらん)という小説家の作品集である。直木賞も取っており、澁澤龍彦らにより没後再評価された、とある。恥ずかしながら初めて名前を知った。この本は50年ほど前に書かれた短編を集めているのだが、これがすごい。
なにがって、一つ一つの短編のバラエティーが普通の振れ幅ではない。時代設定も違う。文体も違う。雰囲気も違えば、読後感も違う。しかし、どれも小説としてとても魅力的で、あっと驚くような展開もあったりして、読むものを離さない迫力がある。
これが半世紀も前に書かれていたのか、というような、新しさにあふれている。自分が小説を書く人だったら絶対に影響されてしまうだろう、というオリジナリティと良い意味でのアクがあって、ほんとうにおもしろい。個人的にはおもしろい小説につきものだと思っている、博識さ、マニアックさが表に出るようなところもよい。どれだけのものを見てきたら、こういう振れ幅でいくつもの作品を生み出せるのだろう?
もっと読んでみようと思う。何か最近新しいものが読みたい、という人にオススメしてみたくなる小説家にであった。