榊淳司「年収200万円からのマイホーム戦略」

相場に惑わされず、中古の物件を買ってリフォームすることで、あなたもマイホームが持てますよ、という本。資産価値としての家ではなく、使用価値(住む価値)に重心をおいて家選びをしよう、という至極まっとうなことを具体的にどうすればいいか、を含めて教えてくれる。
いきなり、それでは買ってみましょう、ではなくて、なぜ新築を選ばないのか、というところからはじめてくれるのが親切。明らかに割高な新築物件がなぜその値段で売られているのか、といったところから住宅に関する事情をきっちり説明してくれる。
その一方で、どのような点に注意して中古物件を手に入れ、どのような業者とどのように話し合ってリフォームのうちどのくらいを自分たちでやっていくのか、について具体的な例を挙げてアドバイスをしてくれる。
この本に嘘はないな、と思うのは、この本に書いてあることが非常に面倒であることだ。リモデルを見据えて中古のマンションや戸建てを買うには、相場だけでなく、どの程度しっかりした構造か、作り直せるか、といったあたりを考えなくてはいけない。なので、相場を知りよい物件を手に入れるためによい不動産屋さんと知り合いになる必要があるし、改築のためには良い業者さんと良い関係を築くことが重要になる。これらには、実に地道な努力が想像されるのである。
前に職場の改築があったときに、業者とのやりとりや素材選びなどについて少しだけ見せてもらったことがあるが、実に面倒である。専門家を相手にして、こちらはこういうのがしたい、ということを主張するのは、面倒だし、いっぺんに全てぱーっときれいになるものではないし、実に神経を使う。できあいのキラキラしたマンションを買うのがどれだけ楽か、ということもわかるのである。
だからこそ、この本はタイトルもビビッドだが、普通に実現可能なことを書いてあると思える。ただ、やろうと思うか、その余裕があるか、というところが大きくて、ほとんどの人はここまで考えないだろうと思われる。
でも逆に、著者が書いているように、現在は昔に比べて、自分の住む価値を考えて家を選び、好きなように住めるようにする住み方がより可能になってきているというのも確かだろう。どれだけ、自分のこととして勉強してやっていくか、手間と説得を惜しまないか、というところにかかっている。時間は有限だ。どこに力を注ぐか、という生き方のスタイルにも関わってくることだが、自分の満足のいくように住む、ということについてじっくり考えていきたい人にはぜひお勧めしたい一冊。