平林純「論理的にプレゼンする技術 聴き手の記憶に残る話し方の極意 (サイエンス・アイ新書)」

どこかで良い評判を目にしたので読んでみた。愉快なイラストとともに、これ以上ないほど気軽な気持ちで読める。が、内容は意外と濃い。
最近、論文を書くことに自信が出てきたせいか、自分の中でのプレゼンの苦手意識がきわだってきているのを感じている。デザインと色使いとかは結局センスだろう、と諦観しているところがあるのかもしれない。
しかしこれを読むと、それは間違っている、論文もプレゼンも同じだ、と思えてきた。考えてみればこの本のタイトルも「論理的に」プレゼンする技術、であって、「魅力的に」とか「センスよく」ではないのだ。
具体的には、『素材間のつながりを明確に(p96)』とか『発表中のスライドと直後のスライドの内容をわずかに重複させる(p138)』といった技術が紹介されている。しかしこうした、読者(聴く人)が迷わないように丁寧に論理の糸をつないでいくことは、論文を書く時に常に意識していることであって、同じことをプレゼンでも意識することはとても重要なのだった。
「論理的に」というところはこの本のあらゆる箇所で意識されており、パワーポイントでどのような資料を具体的につくっていくか、どういうものはダメか、ということを説明する時にもそれがわかる。単に「見やすい」「見にくい」ではなく、聴く人の注意をつないでいけるからこうすべき、とか、説明が途切れないようにするためにこう作るべき、といったように、論理的に説明するためにスライドをこうすべきだ、という説明を常にしてくれているのだ。色をこう使うべき、というときも、それを視線の移動が少なくなるようにするためだ、などの理由づけがあって、応用しやすい。
プレゼンの技というと、「魅力的な」とか「心をつかむ」という抽象的な言葉で語られてしまうこともありがちだが、それよりも、『自然な因果関係と必然性(p20)』を大事にして、いかに論理的に、わかりやすくわかってもらうか、を心がけることが大事なのだ。それを考えていれば、センスがない、と嘆いたりする必要はないのかもしれない、と勇気づけられた。
すごく、基本なのかもしれない。しかし、ここに立ち返ることはとても大事なのだろうと思う。苦手意識を持っている人だけでなく、ある程度できる人も、自分の心構えを確認できる意味で、一読の価値がある一冊である。