デイヴィッド・セイン「英語ライティングルールブック―正しく伝えるための文法・語法・句読法」

論文以外にも、英文メールを書く機会が昨年来増えている。しかし、その形式などは、昔用いていたものをそのまま無頓着に使い回していていたりする。そこで、確認の意味もこめて、また英語らしいこなれた表現を扱えるようになることを期待して、読んでみた。

実際に一通り読んでみたところ、類義語の使い分け、英語と日本語のずれなどを扱った語法編については、これまで見たり聞いたりしたこともそれなりにあって、個人的には、お得感満載というほどではなかった。ただ、例えばexcept(…以外の)を用いる場合は、『英語では「…以外」が指し示すものが明確になっていなくてはならない(p138)』ことに注意を喚起しているなど、あまり意識していないポイントが突かれていてよかった。

また、wishとhopeのニュアンスの違いの説明もすばらしい。

動詞のhopeは未来のことについて言及するが、自分の力ではどうすることもできないことについて述べることがほとんど。(p109)

I hope you'll like it. (気に入ってもらえるとうれしいんだけど)
よりも肯定的な言い方をしたい場合には、I'm sure you'll like it.「気に入ると思うよ」と言えばいい。(p110)

なるほど…。後の句読法編についてもそうだが、こういう言い方は不自然だ、で終わるのではなく、全く別な単語を使ってでも(逆にそこに英語と日本語の感覚のずれが見えて面白いのだが)代替案を示してくれているのがありがたい。すごく、ためになる本であると思う。

しかしこの本の白眉は、ルールブック、というだけあって、カンマやピリオド、引用符やハイフンなどの使い方を網羅的に説明した句読法編だ。日常的な書き物の際の調べものに実に役に立ちそうだ。
細かい話だが、スペースを入れるのか入れないのか、引用符とピリオドやカンマが一緒に出てくる時は中に入れるのかどうか、などあまり普段気にしていないが英文を書く際の常識として知っておきたいことをひとまとめに確認できるのはすばらしい。
コロンのあとが独立した節の場合は大文字にする、とか数は一桁のときはスペルアウトする、とか、段落のはじめは半角5字分下げる、とか、正しく使えているか怪しかったあたりがわかったのも収穫。

原則だけでなく、「なるべく避けたほうがいい」「あまり使われない」といったネイティブの感覚もしっかり書かれているのが参考になる。また、appendixの表現の使い分けもありがたい。手元において参考にすべき本だ。