春日武彦・穂村弘「人生問題集」

タイトルは大仰だが、笑って読める対談集。まじめに語っているのに、とにかくおかしい。語る内容も、語り方も。
精神科医の春日さんと、歌人の穂村さん。生まれ育った環境や持っている感覚は違いながらも、随所で一致してしまう意見があったりする。波長が合うとはこのことなのだろう。
「友情」「仕事」「家族」などさまざまなテーマを設定して話しているが、二人のうちどちらかが常に悩んだり相談したりしているわけではなく、気になること、不安なことなどを互いにさらけだしあい受け止め合っていて、その不思議なバランスの取れ方もおもしろい。
とにかく普通でない二人だけに、それぞれのテーマに対して、考えもしないような角度からのアプローチが飛び出て唸らされることしきりである。日ごろどれだけ均質な人間としか顔を合わせていないかに思い至らされるし、変わった感覚をもった人間と仲間でいることの価値を確認できる。
自分たちの社会不適合者なところを自虐的に語りあるいは開き直り、家庭円満な環境に育ったことによる表現者としての甘さをしみじみと語り、一方で日常的に出てしまうせせこましい性分を嘆き、そんな自分たちを支えてくれるよくできた妻への尊敬をおおらかに語る。なかなか普段言語化しない違和感や日常の思いなどが語られ、気づかされることも多い。
穂村さんは、ほんとうに言葉を強く信頼している人なのだなぁということがあちこちでの発言からわかる。ぼくには、言葉を紡がねば自分を支えられない、というほどの切羽詰まった感じはないけれども、もっと、言葉に対してしっかり向き合っていきたいと思わされる。