水道橋博士「博士の異常な健康―文庫増毛版 (幻冬舎文庫)」

浅草キッド水道橋博士の話題になった本の文庫化。もちろん(?)、読みたかったのは「ハゲ治療」についてだが、本全体としても内容が濃く、またとても興味深く読めた。
ハゲ治療については、この本が出たあとにもずいぶん「こうするのがよい」という情報が多くなってきたこともあって、特に新しいことが書いてあるわけでもないが、そういった状況をまとめる意味でも、自分の髪について考えてみる意味でも、よかった。この本でもまとめられているが、頭皮を清潔にする、栄養バランスを考える、そしてミノキシジル(リアップ)とプロペシアの併用、というのが今のところの決定版だろうか。
もちろん、髪についてだって、それだけですべて解決、というわけではない。しかし、この本で博士がやってくれているように、自分で話を聞いたり試してみたりして、その時点でより良い方法を考え判断していくのが大事だということは健康全般において変わらない。

後半の、水着に使われたことで話題になり、がん治療などにも効果があるというバイオラバーの話と、格闘家らがその威力を実感しているという加圧トレーニングについては、博士が書くように確かにちょっと聞くとあやしくすら感じるが、読んでいるうちに、なくもないな、いやむしろこれはおもしろい、と自分の中での感じ方が変わってきた。
現在効くとされるどんなすばらしい科学的治療などでも、最初はあやしいところがあったりするもので、検証しつつ、比較しつつ良いものを見出していくという科学の性質を考えると、今のところ「あやしいなぁ」というような方法も、これからは誰もがやっているようなメジャーな方法になっていかないとも限らない。
あやしさと、科学的に証明された方法との狭間は案外狭い。「俺の書いていることとて正しいとは限らないし、考えていくべきだぞ」というようなことをしっかり述べつつ、これからこれがおもしろい、ということを正面から取り上げたこの本は、読む人の科学リテラシーのようなものをも試している。
健康法や治療法、サプリメントなどがわんさか溢れている時代に、こういう本はもっとあってよい。