近藤純夫「ハワイアン・ガーデン―楽園ハワイの植物図鑑」

旅行に行く楽しみはいろいろあろうけど、個人的にその最たるものは、旅行に行く(行った)地域について書かれた本に対する興味がぐーんと増すことである。
読みたい本はいくらでもある。「どうせ関係ないし、行かないし」と思っていると、どんなに評判が良くても、やはり少々読む動機としては落ちる。いずれいけたら…という夢や仮想が面白いのだ、という人も多いと思うが、ぼくの場合は、どうもそういうのは動機として弱いようだ。小説よりノンフィクションが多くなるのもそういう気持ちと結びついているかもしれない。もちろん楽しみもあるのだれど、科学論文と同じで、何かを調べたくて、読む感じが好きなのかもしれない。
ということで、この一冊。タイトルでどこへの旅行か分かってしまう。
タイトルはとても洒落ているが、要するにハワイの植物図鑑である。ハワイでよく見る観賞植物、庭木など約400種を写真入りで掲載。
少し面白いのは、それぞれの植物がハワイ諸島に人が訪れる前から存在する固有の種なのか、ポリネシアからわたってきた人が運んだ種なのか、それともそれ以降の近代に持込まれた外来種なのか、についてが全ての植物について詳しく記載してあること。
ハワイの顔とも言えるハイビスカスにもハワイに固有のものと、外来だったり広く分布するものだったりがある。同じく南国のイメージのあるブーゲンビレアは、外来種。他にも、ハワイで見かけた「ハワイっぽい」花の多くは近代以降に持込まれた外来種だ。
外洋を隔てて大陸と隔絶されたハワイ諸島。この島が、どれだけ多くの外来の植物に埋め尽くされ、それが新たなハワイのイメージをつくっているかに気づかされてしまう。とともに、それらの植物が園芸や文化などにおいて、現在のハワイで担っている役割もよくわかる。
ただ花を並べて紹介するだけでなくて、それらがどのような由来で、現在のハワイにどのような位置を占めているか、についてこのように書かれていることで、この本はただの植物図鑑を超えて、一つの読み物としてとても面白い。
植物園ガイドが巻末にあるほか、それぞれの植物の名前の索引が、学名・英名・和名でそれぞれ記載されている親切さはすばらしい!