佐藤多佳子「一瞬の風になれ 第二部 -ヨウイ- (講談社文庫)」

2冊目。試合と練習のサイクルと、それを通して絆を深めていく仲間、高校から陸上をはじめながらも次第にモチベーションを高め才能を開花させていく主人公。こうした日々が、主人公の気持ちを揺れ動かすできごとなどを挟みつつ淡々と進む…ものと読んでいたが、この巻の後半あたりから急に話が展開して面白くなってきた。
主人公が一年生で始まるこの小説。もちろん読み進むごとに学年が上がっていくのだが、それぞれの学年のエピソードの配分がちょうどいい。個人スポーツの部であっても、先輩から精神的なありかたや経験を得て、それを自らの取り組む姿を通して後輩に伝えていくのは一緒なのだな。
一緒の場所で練習し、ともに試合を目指すなかで、仲間が落ち込んでいる時には走る力と勇気を与え、逆に自分もそういう気持ちを返してもらって。孤独なスポーツでありながら、ひととき、そうして気持ちがつながる瞬間がある。一冊目だけだとまだ断片的だったそういう「つながる瞬間」がだんだん浮かび上がってきて、それがぐっとくる。