「考える人 2009年 08月号 [雑誌]」

特集がかなりおもしろい。本屋で即購入。
日本の、ここ300年の科学者(既に亡くなっている方に限る)を100人取り上げ、それぞれの科学者の生涯や考え方がわかる本を一冊ずつ紹介するという企画。
300年前からだから、関孝和や平賀源内など江戸時代の科学者も入っており、面白くて入手しやすい本がそれぞれに紹介されている。ただ、一般の人でも読めるような本(科学者自身が書いたものであれ、その科学者について書かれたものであれ)が見当たらない人に関しては、著名な科学者でも取り上げられていないが、これはまあ、本を紹介したいというこの特集の意図からして、しょうがないところ。

自分が過去に読んだものでは、遺伝学者である木村資生の「生物進化を考える」、数学者、小平邦彦の「怠け数学者の記」、湯川秀樹旅人」と朝永振一郎鏡の中の物理学」、さらには人工雪の物理学者、中谷宇吉郎の随筆集など、面白くて心に残っている本がずらりと並んでいる。
執筆者にも、おっ、と思う人がときおり顔を見せていて、福岡伸一さんが、中尾佐助栽培植物と農耕の起源」を紹介していたり、最相葉月さんが女性科学者の賞に名前を残す地球科学者、猿橋勝子について書いていたりしているのなどはふうんと思った。
一番よかったのは、寺田寅彦の紹介。書いているのは梨木香歩さん!
ちょっと予想しない人選だったが、きっと愛読なさっているのだろう、彼女の文章がまたよい。写真が2枚入った見開き2ページに書かれた文章は、その引用された文章の奥深さといい、寺田寅彦の科学者として、そして文学者としての姿勢について評する言葉といい、彼の魅力を存分以上に伝えていて実にすばらしい。ああ、いいものを読ませてもらった。

寺田寅彦 (ちくま日本文学 34)

寺田寅彦 (ちくま日本文学 34)

知っている科学者の知らない本あり、名前も知らなかったが興味を引かれる科学者あり。例えば、津田梅子の父、という紹介をされてきていたが、環境問題への取り組みや女子教育などにスケールの大きな仕事をした農学者であったらしい「津田仙」の評伝などは、これは読みたい!と見た瞬間に思ってしまった。
津田仙評伝―もう一つの近代化をめざした人

津田仙評伝―もう一つの近代化をめざした人

本が好きで科学にも興味がある人、サイエンス系の本を好んで読む人には、必ず読んでみたくなる一冊が見つかるはず。これからしばらく、読みたい本を探すのに手元で活躍してくれそうである。