[植物]岩瀬徹「形とくらしの雑草図鑑―見分ける、280種 (野外観察ハンドブック)」

急に、植物図鑑が欲しくなった。というのも、ふと植物園に行ったときに、あまりに植物の名前がわからなくて、学者を名乗るものとして少々情けなくなったからである。
というわけで、本屋で30分以上立ち読みして、一冊決めました。
それがこちら。

形とくらしの雑草図鑑―見分ける、280種 (野外観察ハンドブック)

形とくらしの雑草図鑑―見分ける、280種 (野外観察ハンドブック)

植物図鑑と言ってもいろいろある。
なにせ、植物にも、樹木があれば、花があれば、穀物もあるわけだから当然だ。樹木図鑑にしようか、野花の図鑑にしようか、それとも全て載っている分厚いやつにしようか、というところでまず迷う。
いろいろ考えたあげく、身の回りにあってすぐに興味がわくし、まずは雑草や野花の類いが載っているものにすることにした。
もう一つ迷うのは、内容である。絵よりは写真のものが欲しかった。また、専門家でもないので、詳しく葉が何枚で何センチで…という情報が詰め込まれているものはいらない。ただ、一通り植物の特徴がつかめるものがいい。写真も、一つの植物について複数載っているのがいい。

ということでさんざん迷って決めたこの雑草図鑑。なかなかよいです。
冒頭に書いてあるように、外来のものが多くその消長の激しい雑草のなかで、今よく見られるものをしっかり網羅しているとのこと。初心者にとっては280種もあれば十分だろうと思った。
さて、気に入っている理由をいくつかあげていこう。

まず一つよいのは、写真が多いこと。しかも、芽生えの写真、群生しているもの、一つを拡大したもの、花の写真に種の写真…とさまざまな側面から取っていて、それぞれの植物の特徴を捉えやすいのがとてもよい。
説明は最小限だが、写真のキャプションが一つずつ丁寧に入っていて、わかりやすい。一般向けながら、学名がちゃんと入っているのも個人的には重要。
もう一つ、そして一番気に入っているのが、巻末についている『主な科の特徴』である。職業柄、植物を見ても、何科に属するのか、どういう分類になっているのか、みたいなことが気になってしまう。ぱっと植物を見て、おおむねこれはアブラナ科だとかキク科だとかがわかったらどんなにいいだろうと思っていたので、このページはまさに求めていたもの。しかも、この科ごとの分類に従ってこの本の植物たちは並んでいる。見ているうちに、だいたいどういう植物が何と似ているか、といったことが感じ取られてくるからうれしい。

ハルジオンとヒメジョオンがどう違うのか、とかタンポポのさまざま、とかを見ていると、その写真と解説の芸の細かいこと、そして植物の多様な姿のすばらしさにニヤニヤしてくる。買ってよかった。
ビールを飲みながら、または実験の合間に、ぱらぱらとめくってみるのが楽しい。同じように、一冊植物の図鑑が欲しいななんて思っている人がもしいたら、ぜひ勧めてみたい。